【あんスタ】冗談抜きで好き【羽風薫】 (ページ4)

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六月某日ページ4

「羽風くん、付き合ってくれませんか」
「残念だけど、俺婚約者の子がいるんだよね」
「別れてください」

六月某日、晴天。
吹き抜ける風に、髪が揺れる。
今日は午後から彼女と海に行こうと話して。
それから、なんだっけ。
ちょっと待って。さっき、なんて言ったの？

「……は？」
「ですから、別れてください。
そうしたら私と羽風くんで付き合えるでしょう？」
「いや、だから、そう簡単に別れるものじゃ」
「浮気する気もないですか」
「何言ってるの？俺は婚約者がいて、もうその子しか眼中にないわけ。
……言いたいことはわかるでしょ？」

絶対に別れないし、Aに深く溺れてるから。
昔の俺が聞いたら笑いそうだけど、
本気で愛してるから。

「どうしても」
「……まだわかんないの？俺は別れないから。
それに、その利己的な考えやめた方がいいよ」
「なら仕方ないですね」
「っ……何？」

ぞわりと嫌な予感が背筋を撫でる。
ねぇ、君は大丈夫だよね……？

「桔梗Aを誘拐しました。
警察を呼べば彼女は死にますから、
助けてあげてくださいね？」
「ふざけたこと言ってるとさぁ……いくら優しい俺でも怒るよ？」
「まさか、ふざけてなんていません。
本当に誘拐しましたから」

何言ってるの、この子は。
Aちゃん、無事でしょ？
ねぇ、お願いだから無事でいて、お願い。

「何処？」
「探すのは羽風くんの役目でしょう。
まぁヒントとして学院からはそう遠くない場所、ですかねぇ。
これも羽風くんが私と付き合わないから、
あの子とキスなんてするから悪いんですよ」
「―――Aちゃん？」

話を無視して、Aちゃんに電話をかける。
繋がったけれど、何も聞こえてこない。
「Aちゃん……聞こえる？俺だよ」
「おいおい、新手の俺俺詐欺かァ？」
「Aちゃんが急に居なくなるから俺心配しちゃってさ」
「話聞いてんのかおい！」
「今どこに居るの？迎えに行くから教えてくれない？」
「教える訳ねぇだろ馬鹿……！！」

ぷつり、無機質な音が通話終了を意味する。
愛しいAちゃんにしては機械的な声が応答してきたが、だいたい目星はついた。

「俺、マリンスポーツもするんだよね」

残念だね、と告白してきた女の子に笑って、
海の方に向かって走った。

あの訛り方は、きっと俺と同じサーファーの奴。
……待ってて、Aちゃん。