及川先輩の命令:素直になりなよ

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声は震えていなかっただろうか。


ちゃんと言えていただろうか。


発音はおかしくなかっただろうか。


本気だということが、届いただろうか。


携帯を握る手が、微かに震えているのが分かり、少し情けなくなる。


ほんのちょっとの間でも、焦れったく感じた。


『あの』


「…ん？」


『保留でもいいですか？』


「………んんっ？」


聞こえたのは、YesでもNoでもなかった。


保留。


緊張していた身体から力が抜け、ぼふりとベッドに倒れこむ。


『嬉しいです…けど、及川先輩が好きなのかはよく分からなくて。…怒りましたか？』


よく分からない。


それもそうか、彼女は失恋したばかりだったのだから。


「怒ってないよ、むしろちゃんと考えてくれるなんて及川さん嬉しいー」


『なんですかそれ』


「ほんとに怒ってないから。でも、俺も電話なんかじゃなくちゃんと告うべきだったね」


いくらはやく伝えたかったからとはいえ、こういうことは面と向かって言うべきだった。


「今度はちゃんと告うね」


『こ、今度…あ、はい…』


「絶対好きにさせるから。待ってて」


『先輩セリフがクサイです』


「またまたぁ〜嬉しいんでしょ？」


『切りますよ』


「ひどいっ」


自然と笑みがこぼれる。


藤原ちゃん、やっぱ素直じゃないなぁ。

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