プレゼント ページ8
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一つだけポツンと置かれているベンチに腰をかけて、持ってきていた飲み物を徹くんに渡す。
二人でそれを呑みながら、他愛もない話に花を咲かせて。
眼下に広がる都会の煌めきに、ほっと息を吐いた。
「綺麗だね」
「うん。……徹くん、雰囲気ぶち壊していい?」
「いつもは前振りなくぶち壊すけどね。どうぞ」
「バイト始めてから、この夜景は夜勤の人たちの頑張りなんだなあって思うんだ……」
正直なそういうと、徹くんはむせてしまった。
「ほんとにぶち壊すね」と笑うから、何故だかつられて私も笑ってしまう。
喧嘩という喧嘩もあまりなかった。
……いや、あった、か。あんまり覚えてないけど。
うん? あったっけ。
「徹くん、私たち喧嘩したことあったっけ」
「俺がA泣かしたことはある」
「うそ! 覚えてない!」
「あんま思い出さないで。俺若干トラウマ」
気まずそうに徹くんが視線をそらすからこのくらいにしておこう。
でも気になる。私が泣いたの、っていつだ?
「あ、あれか」
「ヤメテ」
ごめんごめんと彼の頭を撫でると、唇を尖らせて態とらしく拗ねるからまた笑う。
そうしたら徹くんはさらに拗ねて、今度は両手で頬をつまむのだ。
私の頬が柔らかいからつまむのが好きなのだと前に言っていた。
「……これからもよろしくね」
つまんだまま言うのかそれを。
という目で見ていると離してくれて、軽くキスをされた。
「目瞑って」
「ん、」
大人しく目を瞑ると、なんとなく暗くなって、徹くんの香りがした。
首元に少し冷たい感覚。
「ネックレス、だ」
「似合ってる」
「えー!ちゃんと見たい! 」
鏡を取り出すも暗くてよく見えず。
仕方ないかと私もプレゼントを鞄から取り出した。
「腕出して」
「はい」
差し出された腕はがっしりとしていて惚れ惚れとする。
包装してもらったのを見ると、徹くんは「綺麗に破ってね」といつも雑に開ける私に言った。
危ない、破くところだった。
「これね、お守り的な意味もあるんだって」
「わ、ブレスレット。すごいいい。ありがとう」
「うん、やっぱり似合う。さすが徹くん」
「さすがA」
記念日の日はいつも晴れ。
私たちは二人とも晴れ男と晴れ女なのかもしれない。
これから先も大切な日が、いつも晴れでありますように。
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ことり(プロフ) - こむさん» お返事遅れてすみません……! 完結いたしました、素敵、と言っていただけて嬉しいです、ありがとうございます! (2018年10月31日 15時) (レス) id: 5b52149a5f (このIDを非表示/違反報告)
こむ(プロフ) - とても素敵ですね。 (2018年10月24日 21時) (レス) id: 11831258d4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ことり | 作成日時:2018年9月22日 0時