【HQ!!】長身リベロ女顔少年は今日も滑る。

滑走48 ページ8

あっという間に過ぎてしまった時間を思い返すと寂しくて、寝るのが惜しいとさえ思ってしまう。


ごろりと横になっていると、俺を呼ぶ英の声が聞こえた。


「お前、今日はフラフラどこか行くんじゃねーぞ」


「いかねぇよ。…昨日の、バレてたか」


「まあね」


この次も会話が続くのかと思いきや、英はすぐに寝てしまって。


規則正しい寝息を聞いていると、俺もいつのまにか眠ってしまっていた。




「おはよ」


眠ったのは英の寝息を聞いてからで、目を覚ましたのは英の声を聞いてからだ。


珍しくすっきりしている彼の顔をみて、あくびをしながら挨拶を返すと、鼻をつままれた。


朝の支度をすませ、ストレッチに入る。


いつもと変わらない雰囲気のように見えるが、感じる空気は緊張。


(…なんか、伝染)


じわじわとこみあがる緊張はあまり心地の良いものではなくて。


息が、詰まる。


「あー、緊張なんかあんまりしねぇのに」


「心臓馬並みっぽいもんね」


「なかなかひどいこと言いますね」


む、と頬を膨らませて及川さんを見ると、愉快そうに笑う。


一体なんなのだ。


「俺を安心させてくれるのは岩ちゃんだけど、お前は逆。なんか振り回される」


「え、真面目に傷つきますよ」


「いい意味でだよ。余計なこと考える暇がないって感じ。…ほら、馬鹿なんだから変なこと考えすぎんなよ」


言葉は変わらず腹立つけど。


でも、声の柔らかさで、いつのまにか変な力は抜けていた。





さあ、初戦だ。

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