【花巻貴大】▽手の冷たいワタシと▼手の温かいオレの話。

ワタシの話。01 ページ3

「はーなー」


「ん」


前の席にいる彼の背に手を伸ばせば。


ペチン、と私の手のひらに自身の手を重ねてくれる。


ここは自分の教室ではないけれど、さも自分のクラスだと言うように私は彼のクラスにいる。


いつも一緒に花のクラスに来る友達は、手を重ねる私たちを見て、いつものようにため息をついた。


「あんたら早くくっつけ」


「ぬるま湯同盟に恋愛感情はない」


ぬるま湯同盟。


手の冷たい私と手の温かい花。


お互いの手を重ねると、あら不思議。


すごくいい温度。


ぬるま湯に浸かっているような感じがお互い心地よくて、勝手に私が名付けた同盟。


ネーミングセンスなんか知らない。


「てかほんとお前手冷たいな。心が冷たいからだな〜」


「何を馬鹿なことを。私の心が沸騰するほどあっついから手が冷たいの」


「それだけ聞くと常に怒ってるみたいじゃん」


「うっさい！」


するりと手を解いて、彼の広い額にデコピンをする。


予鈴が鳴って席を立って。


浅く笑う彼にひらりと手を振る。


空を切った自分の冷たい手のひら。


さっきまで包まれていた温かさはすぐになくなって。


いつもいつも、彼と手を離す時は名残惜しい。


だって、あんなに心地いい温度は他にないから。

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