【花巻貴大】▽手の冷たいワタシと▼手の温かいオレの話。

ワタシの話。05 ページ15

「……はぁああ…」


雑誌をひろげたまま机の上に突っ伏した。


『ー…好きだよ、これから先も一緒にいたい…』


分かってるよ、あんなのただのセリフだってことは。


でも。


離れてくれない、あの感覚。


背中に感じたぬくもりと、耳元で響いた甘く低い声。いつもより熱い彼の力強い腕に、溶かされてしまいそうだった。


…あの、言葉が。



嘘じゃなかったらいいのに。



「〜っ、なに思ってんの私…！」


これじゃあ花を好きみたいじゃん。


……みたい、じゃなくて。


好き、なのかな。


けれど、その瞬間思い出す。


さっきのこと。


絡まった指がー…。


「クッソ川…。なんだったんだろアレ…」


苦しそうな声と、顔。


夕日に溶け込んでしまいそうな、消えてしまいそうな。


そんな感じがした。


伊達に幼馴染をやっているわけではない。


『じゃあね、バイバイ』


あの時の笑顔が苦しそうで。


帰らないで
そばにいて


そう言われている気がしてならなかった。


どうしよう。


今、及川に会わなきゃいけない気がする。


そう思い立てば。


「ちょっと及川に会ってくる！！」


「えっ！？ちょ、帰るとき連絡入れてよ！？」


「うん！」


ねぇ及川


あんた今、何考えてる？

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