【花巻貴大】▽手の冷たいワタシと▼手の温かいオレの話。

ワタシの話。04 ページ11

来てほしいような来てほしくないような時間は、案外早く来て。


監督の所へ集合して、早々と片付けをする。


特にこのあとあつまるメンバーは。


前から早く終わると分かっていた今日は案外人が集まらなくて、綺麗にいつもよく話すメンバーだけが残った。


私は体育館の片付けが終わった後も、ドリンクを片したりしないといけないので少し遅れる。


「あざーっす」


「はーい」


律儀に毎日言ってくれるお礼に返事をしながら片付ける。


いつもより量が少なかったせいか、早く終わった。


集まるのは部室。


広めの部室は、集まるのにも十分な場所だ。


多分もう、みんな集まっているはず。


着替えている人がいても困るので、ノックをして確認すると「どうぞ」と声が返ってきた。


「おじゃましまー…」
ドンッ


あ、これ、壁ドンか？


ドアを開けた瞬間ドンッと音がして、横に長い腕があって、目の前には。


「…おかえりマイハニー」


「どうした金田一」


「……あぁあぁああ死にたいぃいいいい！！」


先ほどまでは普通の顔色だったのに、彼の顔はみるみる赤くなっていく。


そばにあった鞄を抱えて転がり回っている。


乙女か。


なんの前兆もなしにされてしまうと、妙に冷静になって。


少し時間が経ってから面白くなる。


自分の顔が熱くなっていくのが分かった。


「やっば金田一サイコー！」


「王様ゲーム面白いっすね！撮りましたか？」


「ちょっと待って…。私なにも知らなかったんだけど…。こっちは被害者っ！」


ずっと笑い続ける及川たち、「もう嫌だ」と呟いている金田一。


そんな中


「どうですか人生初の壁ドンが金田一は」
「キュンとした？あっ惚れちゃったー！？」
「顔あかー！！」
「金田一もっとぐっといけばよかったのに！」

面白がる三年生陣。


「驚きしかなかったわ」


折りたたみ式の小さなテーブルの上には、ルーレットのアプリが開かれた携帯。
その針が指すのは【壁ドン】

散らばる数字の書かれた紙

恥ずかしいセリフがかかれた包み紙のソフトキャンディ。
その一つにかかれていたのは「おかえりマイハニー」。


どうやら王様が番号を指名して、やることはルーレットで決めるらしい。
セリフがある場合はその恥ずかしいセリフの数々からランダムに引いたものを言う。


この場合は5番を引いた金田一が、私に何かをするというものだったらしく。


ああ、なんて。


「なんて恐ろしいの…この王様ゲーム…」

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