【HQ!!】天才リベロ美少年は今日も逃走中。

逃走06 ページ8

「…え？」


どくり。


心臓が嫌な音をたてて波打った。


「いや、日向もそこまで馬鹿…いや馬鹿か。んー…なんつぅか…」


もしかして経験者か？


予想していたはずの問いに、体が一瞬で強張る。


いや、別に。


言うぐらいは構わないだろう。


「ー…はい」


「ポジションは？」


「…リベロっす」


そう言うと、ふむ、と一言。


烏養さんの一言一言が、気になって仕方が無い。


僕のことを知っているはずなどない。


だって僕は兵庫出身なのだから。


それに。


全国で優勝したわけでもないのだから。


「…今日、暇か？」


「っ、え？…や、まあ…帰宅部なんで、時間はありますけど…」


「練習の後半、自主練の時間があんだけど」


嫌な予感が、いや、嫌な予感しかしない。


ひゅ、


体育館の冷えた空気が喉を通る時に嫌な音を立てた。


「ちょっと混ざんねぇか？」


ざわ、


風など吹いてなんかいないのに、肌に鳥肌が立つ。


ボールには触れてきた。


だって【バレーは】好きだから。


けれど、けれどー…


「日向が練習着忘れたとか騒いでたの聞いてたんだが、今日体育もあったんだろ？」


「は、ぃ」


【部活でのバレー】は、もう、いやなんだ。


「入れってわけじゃねぇが…無理か？」


ああ、でも。


「大丈夫です」


一人では決してできない、強打などのカットをしたいと思ってしまった


その本能に、抗えなかった。


自主練参加なら、部活にはならないだろうと自分に言い聞かせながら。

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