【HQ!!】天才リベロ美少年は今日も逃走中。

逃走10 ページ12

どこだ、あいつはどこからやってきた。


隣の先生が、無意識に資料を握りしめていることに気付く。


素人目に見ても、あいつの綺麗すぎるレシーブはすごいものだと分かるのだろう。


すげぇやつが、まだ、いた。


一つのプレーで、見るものを惹き込む。


表情も、プレーも、全て全て。


静かなだけでなく、言葉に言い表せないほど綺麗だった。


『三村Aです』


どこか、その名前をネットで聞いたことがある気がする。


_____飛べないから、三村は_______


「ー…三村」


もしかして、彼は。


「…？はい」


あいつなのか。


「お前、スパイクうってみろ」


瞬間、強張る表情。


「…や、僕は…」


「じゃあ、ブロックは」


「…僕は、レシーバーです」


ざわ、


三村があのプレーをしたあと、初めて部員がざわつき始める。


彼は心なしか挙動不審で、目が泳いでいる。


疑惑が、確信に変わる。


「お前、飛べないのか」


「っ…うか、いさん…！」


「ジャンプ力、ないんだよな、確か」


「やめてください」


揺らいでいた瞳は、今まっすぐ俺に向けられていて。


そこには、色んな感情が渦巻いていた。



「羽のない妖精、翼のない天使、地上の精霊ー…だっけな？中学の頃のその性別がどちらか分からない容姿と、レシーブだけに特化した様子から、勝手にネットの奴らがつけた名前」


その天使や妖精や精霊と例えられた顔が、どんどんゆがんで行く。


それでも俺はとめなかった。


「天才、三村A」


それほどまでに、こいつが欲しかったから。

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