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生憎私は恋に興味は全くない。思春期と呼ばれる中学時代、同級生の恋愛話に微塵も興味が無ければ、教室の隅で窓を眺めている私など声を掛けられる訳もない。それは今でも変わらない。

やや食い気味にゲトウさんの言葉に返事をした私を、彼は切れ長の目を見開いてまさに『唖然』とした表情で『なんて?』か細い声で私の返事を求めてきた。


「お断りしますと言いました。まだ聞こえませんか?聞こえるまで何度でも言いますが」

「……わたしの」


ゲトウさんはボソボソと独り言なのか喋っているが、全く聞き取れなくて、何度も同じ話をされるのが好きでは無い私は、ゲトウさんの方に身体をほんの少しだけ近づける。


「わ……っ、私の……私のにおいがそんなに不満かい?!」

「え??」


距離を縮めた途端に、大きな声を出した彼のせいで耳がキーンとして、一瞬目眩がした。ぐわん、ぐわんと揺れる脳ではまともに言葉を理解できないのか、今彼は『私のにおいがそんなに不満か』そういった気がするが、気のせいだと信じたい。


「……ゲトウさん。いま、なんて??」

「私のにおいがそんなに不満かい?! キミは私のにおいが好きだと言ったのに!!」

「ごめんなさい、待ってください情報が多すぎて着いて行けません、落ち着いてください」


……どうしよう、ゲトウさんが壊れた。いや、ぶっ飛んだ、というのが正しいのだろうか。人はヤケになると何を言い出すのか分からないど言うがまさにその通りだ。

距離を縮めた事を私は後悔している。身長差もあって、ゲトウさんからの圧力が恐ろしくて堪らない。直接触れないものの、座った状態で躙り寄るゲトウさんから、少しずつ退く事しか出来なくて、でもそれは限界というものがある。


「私のにおいが落ち着くから好きだと言ったのはキミだろう?! 言葉にはね、責任を持つべきだと思うんだ、私は」

「私は言ってません!! ゲトウさんの記憶の中の私と似た方が言ったんです!!」

「人はね、香りや匂いを嗅ぐと記憶が蘇ると言うだろう? つまり試しに嗅いでみて欲しいんだ」

「発言と絵面がやばい事に気づいてください!!」


ゲトウさんの目は完全に据わっている。突然『においを嗅いでください』発言はアウト。せめて彼が一言『冗談だよ』そう笑ってくれたのなら、どんなに良かったか、微笑み一つ見当たらない。


「傑!! 貴様なにをしている!!」


いつの間にか倉庫に来た夜蛾さんが、ゲトウさんの首根っこを掴み問答無用と外まで連れて行く。
私は夜蛾さんが使ってくれたそのチャンスを見逃す事無く、お店を飛び出た。

やはり、と言うべきか。
ゲトウさんには、関わっちゃいけない。


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設定タグ:呪術廻戦 , 現パロ , 夏油傑   
作品ジャンル:恋愛
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作者名: | 作者ホームページ:https://marshmallow-qa.com/dear_utsuk?utm_medium=url_text&utm_source=pro...  
作成日時:2023年10月4日 16時

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