検索窓
今日:8 hit、昨日:48 hit、合計:99,331 hit

6 ページ7

.


白髪の外人さんは尋ねてくるし、ゲトウさんに硝子は取られるし……散々な一日だった。
それが顔に出ていたらしく、バイト先に顔を出せば、夜蛾さんの開口一番はおはよう。ではなく『目が死んでるぞA』だった。

不安があるなら聞くぞ、と相談に乗ってくれるという夜蛾さんに『限界になりそうだったらお話しますね』と伝えて、エプロンを肩に通す。

今日は夕方の閉店までの短い時間にシフトを入れて貰った。これを終えれば家に帰って休めるから頑張らねば。と自分に言い聞かせていると、店の前にマウンテンバイクが一台止まった。


「あの、すみません。店の前に自転車を止め」


注意している途中で、自分が話しかけている相手が誰なのか気がついて、言いかけた言葉が不自然に途切れた。
ガッシリとした背中、ハーフアップにお団子、そして極めつけは耳元で光る黒いピアス。


__ゲトウさん、だ。


「ああ、すまないね。一度鍵を掛けようとしただけなんだ。此処では邪魔になってしまうからね、大丈夫。止めないよ」

「……すみません、知識不足で」

「気にしないで。紛らわしい事をしたのは私の方だからね」

__悩みの種が此処に居たのをすっかり忘れてた。

ゲトウさんはお店の脇にマウンテンバイクを片付けると店内に入っていく。買い物?それともシフトの提出? 前者は有りうるが後者はわざわざ店に足を運ぶ必要性は全くない。ならば残されたことと言えば、夜蛾さんと話でもしに来たのだろう。


__どちらにせよ、私には何の関係もない。


「A。倉庫の本の整理を頼む、今度バザーに出す物を纏めといてくれ」


夜蛾さんから鍵を受け取り、薄暗い倉庫へと足を踏み入れた。掃除はマメにしていると聞いているが、それでもやはり少々ホコリ臭さの残る場所で早速仕事に取り掛かる。

大まかに纏められたダンボールから、バザー行きと破棄に別けるだけの単純作業。量はそこそこあるが、直ぐに終わるだろう。

「……作業、進んでいるかい?」

「ひっ!!」

耳に吐息が掛かり、肩が跳ねる。座り込んだ状態のまま振り返り後退ると、棚に背中をぶつけて、痛みに思わず顔を歪めた。


「すまない、まさかキミがそんなに驚くと思っていなくて。大丈夫かい? 立てる?」

「…………ゲトウさん、今日確かバイト入って居ないですよね。なんで居るんですか?」


痛みを堪えながらやっとの事で驚かせてきた悪質な人間に質問をすれば、目の端に私と同じ色のエプロンが揺れる。


「キミの顔色が悪いから手伝ってやってくれとさっき頼まれたんだ。脳き___ああいや、店長に」


今もさっきも、私の顔色が悪い原因は目の前にいる貴方だよ。

.

7→←5



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (276 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
1167人がお気に入り
設定タグ:呪術廻戦 , 現パロ , 夏油傑   
作品ジャンル:恋愛
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名: | 作者ホームページ:https://marshmallow-qa.com/dear_utsuk?utm_medium=url_text&utm_source=pro...  
作成日時:2023年10月4日 16時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。