05.詐欺師に向いてる ページ41
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｢前から聞こう聞こうとして忘れてた話、折角今二人とも揃ってるから聞いていい？｣
もう既に冷めているであろうコーヒーを緩く掻き混ぜながら、硝子は私と傑それぞれに視線を投げかける。
＿＿なんだろう、硝子まで改まって
傑の『いいよなんでも聞いてくれ』という言葉に私も頷くと硝子はコーヒーを一思いに飲み干した。
｢夏油が胡散臭い教祖してた話は伊地知の調査報告で上がってたから知っているんだけどAは？ まともな情報、
表向き教祖として活動し、時折呪霊回収も含め外出していた傑に比べて私は元の身体が身体だ。どう足掻いても目立ってしまう。
美々子と菜々子がどうしても行きたいと言うので非術師が集まる轟音の世界(某東京のテーマパーク)に" コスプレ"として行ったことはあるが、あれはあれで最悪な思い出だった……何度頭に来て帰ろうとした事か。
｢……えっと、幸運を呼ぶ猫、とか｣
｢はあ？ なにそれ。幸運の壺、みたいなやつ？｣
硝子は冗談でしょと鼻で笑ったが、これは決して冗談ではない。
実際、傑が盤星教の教祖として始めた頃、どうしても客や注目が集まりづらく、趣向を変えてみよう。という提案の元、幸運の壺ならぬ"幸運を呼ぶ猫"として私が駆り出されたのだ。勿論私は反対したし、提案したのは誰だと問い詰め、カーテンをビリビリに引き裂いた記憶すらある。
傑に宥められて、上手く転がされて、渋々引き受けたところ、『見るからに猫じゃない猫』として別の意味で注目を浴びた。終わり良ければ全て良し、という言葉があるけれど、一日中見世物にされて時々触られたくもないのに触られて、ストレスで何度毛玉を吐いたことか。
｢へー……人って簡単に騙せるもんだな。どうせなら古本屋の店員よりもバイヤーとやったら？｣
｢そこの貴方、最近肩が重くないですか？ 重いですよね。私には分かります！ ……って言ったりするアレ？｣
｢そ。夏油、お前なら老若男女イチコロだろう？｣
『胡散臭い男No.1』と意地悪く笑う硝子に『目の前で人の悪口を言うのは性格が悪い』と傑は不貞腐れた顔をするものだから、私も硝子も声を上げて笑った。
｢酷いじゃないか。硝子と二人揃って私をいじめて……はあ、私は本当に心が痛いよ｣
突然、胸元に手を置いて苦しむ素振りを見せる傑は、私の肩に重心を向けながら深く息を吐いた。長い黒髪のせいで表情は窺えないけれど、鼻を啜るような音がして。
｢えっ……そ、あ、それはごめんね？｣
｢おいA。早速ソイツの安い猿芝居に騙されるな｣
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作者名：愛 | 作者ホームページ：https://marshmallow-qa.com/dear_utsuk?utm_medium=url_text&utm_source=pro...
作成日時：2023年10月4日 16時
