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大学なのだから彼がいてもおかしな話ではないが、何故、わざわざ話しかけて来たのだろう。私の記憶が正しければ、彼は私と硝子とはクラス自体違うはずなのに。
「……ゲトウさんの事、話題になんて挙げていないです。お気になさらずに」
「うーん? 私、これでも耳は良い方なんだ。だからキミが昨日の出来事を宗教勧誘だと勘違いしてお友達に話していたところも全部聞こえているんだよね」
「そうなんですか。 ……あ。次の講義、十分前着席タイプの人だから戻るね」
耳が良い。所の話じゃない。彼は一体何処から私と硝子の会話を聞いていたんだろうか。
彼から逃げるように、適当にそれらしい理由をつけてその場を立ち去ろうとすれば、硝子が突然『あれ?』と声を上げた。
「アンタ次の講義は休講じゃなかった?」
「ばっ……しょ、しょーこ!!」
私はこの時初めて硝子を睨みつけた。だってこんなの酷い。確かに私は次の授業は休講だし、なんならそのまま授業の時間は昼寝でもしようと思っていたのに。
ご丁寧に、ゲトウさんにも聞こえるように補講の事まで口にする。
「へえ。その教授だとだいぶ時間にルーズだし、もう少しゆっくりしてても大丈夫なんじゃないかな。遅刻したって気づかれないし」
『おじいちゃんだから』と、ニコニコ上機嫌で会話にしれっと混ざり始めるゲトウさん。ちゃっかり近くの席に腰まで下ろすものだから、彼はきっと時間ギリギリまで居座るつもりなのだろう、正直いってやめて欲しい。
__硝子と折角話してたのに!
「おや? 教室に戻るのかい?」
「時間までまだまだあるぞA」
「時間ギリギリはよくないからやっぱり戻るよ。じゃあね、硝子」
引き止められる声に手だけ降って、二人に背を向けた。
教室から出る際に二人の様子を確認すれば、仲良さそうに談笑する姿が見えて。私は重たい足取りで自分の教室までの廊下を歩いた。
*
「前世でどれだけ悪行を詰んだら、あそこまでAに逃げられるんだよ、教祖様」
Aの居なくなった席を眺めては硝子はため息を零した。それに反応するように夏油が顔を上げると、先程まで浮かべていた笑顔はどこへ行ったのやら、眉間に皺を寄せる硝子が冷たく言い放つ。
「うーん、嫌われるようなことはしたつもりないんだけどね、避けられてしまっているんだ。 ……硝子は何時からAと?」
「自覚しないから嫌われてんだろ。私は高校からだ。私はお前と違って素行が良いからな、神様とやらが味方してくれたんだよ」
「ははっ、神様……ねえ」
神様がいるのなら。何故、彼女は__
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作者名:愛 | 作者ホームページ:https://marshmallow-qa.com/dear_utsuk?utm_medium=url_text&utm_source=pro...
作成日時:2023年10月4日 16時