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｢……？｣
インターホンの鳴る音で私は目を覚ました。欠伸をしながら窓の外を眺めるともう既に日が昇っていて、私はどうやらあのまま泣き疲れて寝てしまったらしく、服は昨日のままで、髪の毛もぐしゃぐしゃ、出られるような状態では無い。
＿＿大学もバイトもなくて良かった……
壁に掛けられた時計を確認して、寝坊では無いことにほっとして肩をなでおろす。しかし、ほっとしているの束の間。催促するかのように再びインターホンが鳴る。
＿＿執拗いなあ、もう
何かのセールスか、それとも宗教勧誘か。いや、もしかしたら某テレビ局の料金の話かも。
音を立てずに扉へと近づき、ドアスコープを覗いた瞬間、喉の奥で小さな悲鳴が漏れた。腰を抜かしそうになったところ、壁に手を付き未然に防げたものの、左足に傘立てが当たり派手な音を立てる。
｢A。今派手な音がしたけど大丈夫かい？？ 何処かにぶつけた？！｣
｢だ、大丈夫！！ 大丈夫……なんですけど、ちょっとまだ身支度も何も終わってないので扉は開けられないです夏油くん！！｣
寝起きの頭でインターホンを鳴らす人物が誰かと確認したら、夏油くんが居ました。なんてホラーやめて欲しい、朝から心臓に悪い人だ本当に。
待って。と声を掛ければ、扉の向こうから『じゃあ後でもう一度来るよ』と勝手に約束され、足音は遠ざかって行く。
＿＿それ、スマホでじゃ、ダメ？
未だ使われた形跡のない、彼とのトーク履歴。彼と顔を合わせてもしも昨晩のように泣き出してしまったら……そうなれば、今度こそ誤魔化す事は出来ないのだろう。
＿＿ああでも、悩んでいても仕方がないか
**
ベストタイミングと言うべきなのか、私が朝食を食べ終えた時に再びインターホンが鳴る。スコープを覗くとやはり立っているのは夏油くんで、チェーンを開けたまま扉をほんの少し開けた。
｢おはよう夏油くん……どうしたの？｣
｢おはようA。キミ、これからなにか用事あるかな｣
｢ない……けど｣
あるとするならば買い物に出掛ける事くらいで、しかもスーパーではなく文房具屋の為、そこまで急ぎでもない。
｢じゃあさ、私に付き合ってくれないかな｣
しまった！ ここは嘘でも用事があると言うべき場所だったか。しかし今更訂正したところで後の祭り。下手に誤魔化すよりも従った方が多分、恐らく、痛い目には合わない気がして。
｢……買い物に付き合う、だけでいいんだよね？｣
｢私としてはデートだと思ってくれて構わないけど？｣
この女誑し……と内心毒づく。
一体これまで何人の女性を落としてきたんだか。そう考えた時、何故か胸の内側にまた鋭い痛みが走った。
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作者名：愛 | 作者ホームページ：https://marshmallow-qa.com/dear_utsuk?utm_medium=url_text&utm_source=pro...
作成日時：2023年10月4日 16時
