誰かの懺悔 ページ24
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同期が離反した。
「火、いるかい?」
先生からその話を聞いて数日経ったある日、離反した一人が私の前に姿を現した。もう一人は__此処には居ないらしい。
「夏油が何をしようが構わないけど■■は巻き込むなよ。やるならお前一人でやったらどうだ」
■■は私たち同期の中で一番お前に懐いていた。だからってそれを理由にあの子を巻き込むのは話が違うだろ。あの子の術式なら、まだ " 術式の暴走 " で話は収まる、直接手を下した夏油とは違って。
「……違うよ、硝子。最初に村人に手を掛けたのは■■だ。__最も、誰が先だ後だなんて事はどうでも良い話だけどね。■■は自らの意思で私と共に居る。少なくとも私は彼女に何かを吹き込んだ訳じゃない__まあ、本人が此処に居ないのだから何を話しても作り話のように聞こえてしまうかもしれないけどね。それに__」
じゃあね。そう遠ざかる背中を追うことも無く、私は五条と繋がったままの携帯電話を握り締めた。電話越しから『■■も居んのか?!』叫ぶような五条の声が聞こえたけど、私は答えることなく電話を切った。
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「……今日、傑の宣戦布告に "アイツ" は居なかったよ。傑曰く『気分じゃない』だとさ、白状な奴だよね」
呪術師達が作戦会議を行う中、席を外した私の後を態々追って来たのか、聞いてもいないことをベラベラと喋る、最強となった同期の一人。
__本当は夏油の事で手一杯の癖に、■■の事、聞いたんだな
五条が聞かずとも、私があのヘンテコ前髪男に聞いてやりたかった。確かめたかった、消えてしまった■■の事を。でも私に下されたのは『待機』だ。貴重な反転術式が消えると困るからだろうな。
「■■の性格的にああいう派手なこと、絶対に避けるでしょ。それに、私達はもう、明確には敵同士、積もる話をすることなんて、許されない……それは五条も分かってるでしょ?」
真実を知りたかった、本人の口から。十年前、新宿で夏油から告げられた話の真実を。
__「二年に上がって■■の身体に傷が増えてキミはおかしいと思わなかったのかい? あれらは全て " 非術師 " によって負わされた傷なんだよ」
……ねえ、■■、気づかなかったのは私だから責めるつもりなんて一ミリもないよ……けどさ、もっと口にしてくれなきゃ、分からないよ。
一番理解した気になって気づいていなかった愚か者は、私も同じだ。
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「硝子? どうしたの寝不足?」
不安げに私を見つめるAの瞳には、確かに疲れた表情の私がいて。なんでもないよと笑って流す。
__素行が良いから巡り合わせが早いわけ、ないだろ
これは私が気づけなかった罰なのだから。
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作者名:愛 | 作者ホームページ:https://marshmallow-qa.com/dear_utsuk?utm_medium=url_text&utm_source=pro...
作成日時:2023年10月4日 16時