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「諦めないんですね……」
「勿論。私は言ったはずだよ。A、キミと話がしたいとね。今のキミは私を知らない、ならお互い知るところから初める……のも、ダメかな?」
「……ダメと言うよりも、ゲトウさんはなんでそこまで私に拘るんですか? 別に前世の記憶があっても、私である必要性なんてないんじゃ」
「 " 私なんて " じゃないよ、キミだからいいんだよ、A」
「…………分かりました。必要最低限なら会話しても良いですよ」
根負けした。ゲトウさんはきっと私が頷くまで同じ質問、やり取りを続けるような気がして、私が先に折れた。
渋々と言った様子で頷くAに、夏油は嬉々とした表情を浮かべ『本当かい?!』と、今度こそ夏油の方がAよりも遥かに大きな声を出して、図書館にいた全員が二人に鋭い視線を送る。その視線に、すみません、と頭を下げた二人。
「ゲトウさんのせいで私まで怒られたじゃないで」
「傑だよ、私の名前は傑」
「…………会話はするとは言いましたが、名前呼びはまだ全然早いと思いますけど?」
「さん付けじゃあまりにもよそよそしいじゃないか。……まあ、無理にとは言わないよ。呼びたくなったら呼んでね」
「ちゃっかり要求増やすのやめませんか??」
この流れだと数日後には名前呼びを強制してくるであろう彼に、先につつけば、浮かべた笑顔が若干引き攣ったのを確認して、やっぱりなと呆れてため息を吐く。
「……まあ、それはおいおい。それでゲト……夏油くんは私のなにを知りたいんですか??」
「私がキミについて知りたいことは殆ど知っているから、逆にキミが私について知りたいことを聞くべきじゃないかな」
「質問を質問で返さないで下さいよ」
「おっと失礼。……そうだね、なんで私とタメなのに敬語なのか気になるからやめて欲しい、かな」
だから……と開きかけた口をゆっくりと閉じた。夏油くんは『知りたいこと』などと言いつつ、自分の欲求しか言っていない。私の話聞いてましたか? 更に質問で返したい気持ちは山々だが、相手にするだけ夏油くんとの時間が長引くだけなので、細かいことは気にしない方がいいのかもしれない。
「聞きたいこと…………その、前世とやらで私と夏油くんは同級生で、それだけで良いんだよね?」
彼に以前聞いた際『恋人になりたい』と言っていたから、恋人でないのは明確で__私の分かりやすい片思いか、それとも夏油くんに想いを寄せられていただけなのか。
「私と?? 私とキミはね、家族だったんだよ。A」
「……はい?」
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作者名:愛 | 作者ホームページ:https://marshmallow-qa.com/dear_utsuk?utm_medium=url_text&utm_source=pro...
作成日時:2023年10月4日 16時