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その次の日のFPはというと、集中力や技術が及ばず、無念の2位。
しかし初日のSPの結果との総合点で僅かに上回り、無事1位となった。
「お疲れ様、A。でも課題は山積みね」
「はい…。どうもFPが苦手なんです。自分で選んだ曲だけど、やっぱりテーマが難しくて」
「いずれ、分かるようになるわよ」
ぽんと優しく肩を抱かれ、私も頷く。本当に良いコーチだ。励ましてくれて、いつも私にパワーをくれる。
「(…あ、そうだ。連絡しないと……あれ)」
電源をつけると、10分前くらいに『おめでとう』といつもの素っ気ないメッセージがある。もちろんユリオから。
不思議に思って、もうすっかり慣れた名前をタップする。…しかし、10コール鳴らしても応答はなかった。練習中だろうか。
「(なんで、報告してないのに結果が分かるんだろう…)」
私が直接話したかったのにな、と少し残念に思う。私がちょっぴり自慢げに、そして上機嫌に言えば『調子乗んな』っておかしそうに笑ってくれるのだ。その瞬間が、好きだ。
「…A、取材が来てるわよ!」
「ほぇっ?!わ、私取材なんて慣れてないんですけど……」
「来週はもっと大きな会場で今シーズンの抱負を言わなきゃいけないのよ!ほら、練習のつもりで!」
練習だなんて、と私は困ったように微笑む。そういうとこ、ユリオに似てるなんて思ったりして。
「(…そういえば、私……気のせいかもしれないけど、)」
最近、ユリオのことばかり考えてる。
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作者名:萌菜 | 作成日時:2016年12月9日 17時