些細な事 ページ1
思えば、俺はいつもと少し違っていた。
出陣で派手に負傷し、他の隊員の手を煩わせてしまった。なんとかギリギリで勝利したものの、周りより練度は高かったこともあり苛ついていたのかもしれない。
本当に些細な事だったのだ。
長時間の手入れを終え、大広間の襖を開けるといつものメンバーが酒を盛って今日も騒いでいた。
そこに、俺の恋人＿＿＿俺の主も、ちびちびとお酒を飲んで他の男共と楽しんでいる。
上機嫌で主に片腕を回しながら酒を注ぐ日本号。その隣には随分と酒に酔いながらぴったりとくっつくへし切長谷部。
いつものことなのに、無性に嫌気が差した。
「……なぁ、主」
「あっ、鶴丸さん！体、大丈夫ですか？今鶴丸さんの分も取ってきま……」
「もう深夜だ。また寝坊でもするつもりか？そんなだから執務に遅れが出るんだろう」
自分が思ったよりも低い声。あんなに煩かったその場がシンと静まったのが分かる。にこやかだった主の顔が、強ばった。
「だいたいきみはいつもそうだ。周りに流されてしまうから、この場から立ち去れないでいる。今日もどうせ部隊を撤退させるのを迷った挙句、近侍の長谷部の意見でも呑んだんだろう。おかげで俺はボロボロだったぜ。はは」
「……鶴さん。それ以上言ったら僕も怒るよ」
「なんだ、光坊。きみだって同意見だろ？」
「その優しさが主のいい所じゃないか。それに鶴さんが怪我をしたのは、主のせいじゃない」
我ながら酷い言いようだと、心の奥で自嘲した。こんなことを言うつもりも、本当は微塵もなくて……
燭台切の言う通りなのだ。決して主は悪くない。
しかし、嫉妬というのは恐ろしいもので、他の男といるのを見るとつい悪態をついてしまったのだ。
「あ、の……鶴丸さん」
「俺はもう寝る」
「…………っ」
身を翻して、自室へ向かう。
今にも涙が零れそうな瞳と、引き結んだ唇が脳にこびりついた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 63人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
萌菜(プロフ) - 凪花さん» ありがとうございます(^-^)遅れてしまい本当にすみません＞_＜ (2018年2月24日 18時) (
レス) id: dc0cd12c91 (このIDを非表示/違反報告)
凪花(プロフ) - 続きが気になります！頑張って下さい！応援してます！ (2018年2月2日 16時) (レス) id: 254f4e5b63 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：萌菜 | 作成日時：2017年12月8日 11時
