放課後デート 摂津万里 ページ5
…あ、あの気だるそうに歩く大きな後ろ姿は。
「万里くん!」
「あ?あー、監督ちゃんじゃん」
買い物の途中、学校帰りの万里くんを発見した。手に持つ薄っぺらいスクールバッグには、恐らく教科書はろくに入っていないと思われる。
「あれ…、こんな時間に下校?早くない?」
「あー、サボり。午後自習だったし」
「全く…!勉強は大丈夫なの?テストもうすぐなんでしょ?」
「ヨユーヨユー。5位以内とか楽勝だし」
「神様はなんて理不尽なの……」
その器用さが万里くんの良い所でもあって、悪い所でもある。私はため息をついてから、提案した。
「じゃあ、暇でしょ?買い物付き合ってよ」
「はぁ?いや俺はこれからゲーム…」
「どうせ至さんと後でやるでしょ、ほら早く」
「至さんが会社行ってる間にこっそり強化したい武器あるからだっつーの……わぁったよ、行けばいいんだろ」
結局、万里くんはいい子なのだ。私はつい嬉しくなって渋々承諾する万里くんを後ろからぐいぐい押すと、少しだけ怒られた。
「ったく……俺を好き勝手扱える女、監督ちゃんしかいねぇよ」
「…ん?何か言った?」
「っ、何でもねーよ。付き合ってやる代わりに今日の晩飯の選択権は俺な」
「え!せっかくさっき良いスパイスが手に入ったのに…」
頭を垂らす私に、万里くんが笑った。ほんっと頭の中カレーばっかだよな、監督ちゃん、と。
何だかんだ文句は多いし手のかかる子だけど、その中にある万里くんの優しさと無邪気さがみんな好きで、私も好きだ。
ラッキーシーズン
秋
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作者名:萌菜 | 作成日時:2017年3月21日 14時