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…まあ、過去の思い出に縋るなんて惨めなだけだ。
そう自分を奮い立たせ、あの日のように台本に目を通す。
そうしているうちに、扉が開いて___
「遅れてすみません、平野紫耀です、よろしくお願いします!」
__まだ遅刻にはならないのに、謝りながら彼が入ってくるんだ。
本当に時が戻ったような錯覚を覚える。
…でも、彼がついた席は私の隣じゃなかったし、今回はペットボトルの水も用意されていない。
結局は、ただの願望と同じ。
そんな私の思いをよそに、台本合わせは着々と進んでいった。
前作と違って、冷は大分優しい性格になっていた。
言葉にも棘がなくなっている、と言う設定だからそこも工夫しながら読んでいく。
…そして、最後は絆を深めた冷と彰が恋人同士になって話は終わり。
「では休憩に入りまーす」
スタッフさんやキャストさんがわらわらと動き始める。
今回は飲み物がないし、と思って自動販売機に行くことにした。
あの時は行けなかったんだったな、
少し懐かしくなる。
どこにあるのか知らなかった自動販売機は、部屋から少し遠いところにあった。
「…何買おうかな…」
迷っていると、
横から長い指が迷いなくミネラルウォーターを押した。
思わず横を見ると、そこにあったのは整った横顔。
「……………平野…さん」
心臓止まるかと思った。
「…やっぱ、台本合わせの時はこれじゃないとね」
目を合わせずに彼が呟く。
「____覚えてるんですね」
もうとっくに忘れたかと思ってた。
あんな些細な記憶に浸ってるのは私だけだって。
「忘れるわけないじゃん」
どう解釈したらいいのか、
分からなくなって黙り込む。
そのまま沈黙が続いた。
「…じゃ、戻ろっか」
やっぱり彼は、最後まで私を見ないままだった。
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舞(プロフ) - 月さん» コメントありがとうございます!!きゅんきゅんだなんて恐縮です…笑 平野くんと主人公ちゃんは最終的にくっつきましたがいかがでしたでしょうか…楽しんでいただけていると幸いです!まだ番外編を書く予定ですのでぜひ読んでくださると嬉しいです! (2021年1月29日 23時) (レス) id: 0912b5ffef (このIDを非表示/違反報告)
月(プロフ) - 舞さんはじめまして。きゅんきゅんしながら読ませてもらってます!平野くんと主人公ちゃんがくっついてくれることを願ってます。笑これからも更新頑張ってくださいね! (2021年1月11日 11時) (レス) id: 11039f4f3f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:舞 | 作成日時:2020年12月2日 20時