106 ページ7
扉を開けた向こう側、彼は階段を登っていた。
いつの間にか激しい雨が降っている。
「…待って、」
立ち止まってゆっくり振り返る。
彼の目は、これまで見たことがないほど切なかった。
「…今更俺に何なの」
声が微かに震えているのが分かる。
「もう友達には戻れないって、」
「言ったよね？」
冷たい水を浴びせられたような感覚に陥る。
「言った」
「でも私は、友達に戻りたいんじゃない」
時が止まったような錯覚を覚える。
「好きなの、」
「平野っちのことが」
彼の瞳が大きく見開かれた。
そのまま固まっている。
私も茫然としていた。
言ってしまった。
言うつもりはなかったはずなのに。
そのまま見つめ合う。
彼も、私も、目を逸らせない。
「……今更言ったって遅えよ」
やがて平野っちが、振り絞るように呟いた。
その顔は泣きそうに歪んでいる。
「俺はもう、あんたのことなんか_____」
そこまで言って、静かに首を振る。
そして、そのまま雨の中へ姿を消した。
急いで追うけど、彼はもう見えない。
「…うぁぁあぁあ」
脚の力が抜けてその場に崩れ落ちる。
結局、どうやっても、
「無理に決まってるよね、」
顔が無理矢理笑顔を作る。
笑いかける人なんていないのに。
目を閉じると、涙が何粒も頬を伝って転がり落ちた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 494人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
舞(プロフ) - 月さん» コメントありがとうございます！！きゅんきゅんだなんて恐縮です…笑 平野くんと主人公ちゃんは最終的にくっつきましたがいかがでしたでしょうか…楽しんでいただけていると幸いです！まだ番外編を書く予定ですのでぜひ読んでくださると嬉しいです！ (2021年1月29日 23時) (
レス) id: 0912b5ffef (このIDを非表示/違反報告)
月(プロフ) - 舞さんはじめまして。きゅんきゅんしながら読ませてもらってます！平野くんと主人公ちゃんがくっついてくれることを願ってます。笑これからも更新頑張ってくださいね！ (2021年1月11日 11時) (レス) id: 11039f4f3f (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：舞 | 作成日時：2020年12月2日 20時
