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どうしようもない感情が胸に込み上げる。
彼は、何かをこらえるように唇を噛み締めた。
その隙間から、食いしばるような声が漏れる。
「……俺は、今更、」
その続きが発せられることはなかった。
「………A!!!!!!」
廊下の向こうから、悲痛な声を上げて酒井さんが走ってきたから。
酒井さんはそのまま、私をひしと抱きしめた。
「…どれだけ心配したと思って、」
微かに涙の混じるその声を聞いて、私の瞳からも涙が溢れてくる。
「ごめんなさい、」
…幸せ者だな、私。
こんなにも心配してくれる人がいて____
「本当に、本当にありがとうね、平野くん」
私を離して、酒井さんは深々と頭を下げた。
「すぐに探すって言ってくれなかったら、私おろおろするばかりで何もできなかったわ」
…そんなことを、
思わず彼の顔を見つめる。
そういえば彼は、息を切らして駆けつけてくれたっけ。
もしかして、必死に探してくれていたのだろうか。
「…そんな大したことじゃないですよ」
「大切な人が危険に遭ってるんだから当たり前でしょう?」
"大切な人"、
決して私を見ずに言う彼の真意が掴めない。
私はその一言にこんなにも心を乱されてるのに、
「じゃ、気をつけて」
「…ええ、平野くんも気をつけて」
やはり彼は、最後まで私を見なかった。
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舞(プロフ) - 友梨さん» 初めまして、コメントありがとうございます!面白いと言っていただけて嬉しいです…!まだお話は続きますので、ぜひ楽しみに読んでいただけるとありがたいです。 (2020年10月18日 0時) (レス) id: 9c2773f025 (このIDを非表示/違反報告)
友梨(プロフ) - はじめまして。いつも楽しく拝読させて頂いてます!舞さんの作品とても面白くて何度も読み返してます!いつも応援しています!頑張ってください!!! (2020年10月17日 18時) (レス) id: 5a310d6604 (このIDを非表示/違反報告)
舞(プロフ) - じくねこさん» またコメントありがとうございます!嬉しいです!これからも楽しんで読んでいただけるように頑張りますね…! (2020年9月12日 1時) (レス) id: 9c2773f025 (このIDを非表示/違反報告)
じくねこ - 更新ありがとございます続き楽しみ (2020年9月11日 23時) (レス) id: 1083519e52 (このIDを非表示/違反報告)
舞(プロフ) - じくねこさん» こちらこそ読んでいただいてありがとうございます!作者のモチベーションアップに繋がります( ;∀;)今日も更新するのでぜひ楽しみにしていてください…! (2020年9月7日 17時) (レス) id: 9c2773f025 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:舞 | 作成日時:2020年8月23日 10時