Gittering World (ページ7)

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「おはようございます、今日はよろしくお願いします」

撮影用のスタジオに入る。
中央に椅子が２つ置いてあった。

よろしくお願いしますーというスタッフさんの声を聞きながら周りを観察していると、

「A、こっちよ」

酒井さんに手招きされて楽屋に案内された。
これまで振り当てられてきたものより大きくて、主演という立場の重みを感じる。

「じゃあメイクとヘアセットお願いします」

いつも私についてくれているメイクさんの優子さんが駆け寄ってきた。

「Aちゃん凄いわね、映画初出演で主演でしょう？しかもあの平野紫耀と共演なんてねえ」

興奮した口ぶりで話す。

「んー、この役を頂いたからには頑張らないとね」

「謙虚ねえ、威張ったっていいのに」

どこに威張れる要素があるのさ。
まだ役を頂いただけで何にもやってないんだから。
しかも私が失敗したら迷惑をかける人の数めちゃくちゃ多いのに。

そんなことを考えているうちに優子さんはもうメイクを終えていた。
いくらいつもついてくれてるからって早すぎる。
でも仕上がりは完璧なんだから本当にすごい。

「Aちゃんならできる、ずっと見てきたから間違いないわ」

優子さんは笑った。
その名の通り、どこまでも優しい人だ。

「ありがとう、頑張るね」

…こんな人が近くにいてくれてよかった、

心の底からそう思った。