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『じゃあ撮っていきます…3,2,1,はい』

例の彩人との回想シーン撮影開始。

カメラが回りだすと横浜さんの雰囲気ががらりと変わったのが分かった。
全く表情がない。目に光がない。

そして私も、自分の中で何かが変わったのを感じた。

「…なんで私を」

横浜さん、ではなく彩人は何の感情も込めずに私を見下ろす。

「…そんなの考えたら分かるじゃん?」
「俺は、お前みたいな弱いやつが嫌いなんだよ」
「俺の前から失せろ」

…そんなこと言われたって、

「私はここに「今なんて言った?」

遮られて、ジリジリと距離を詰められる。

「お前の言葉なんか誰も聞いてねえよ」

乾いた音と、頬に感じる痛み。
フリじゃなくて本物の平手打ちだ。

事前に決めておいたことなんだけどね。

「この世にいるだけ目障りなんだよ、お前は」

ドクン、と心臓が嫌な音を立てる。

"目障り"

これが演技だって分かってるのに、

『Aちゃんは何のためにここにいんの?』
『存在するだけ目障りだよ』

かつて私に向けて放たれた言葉を思い出してしまう。

これはあの時と違うんだ、違う…
もう私はあの頃の私じゃない、

それなのに、
 
「ごめんなさい、目障りでごめんなさい、ごめんなさい」

口から出るのは謝罪の言葉ばかり。

数年前の自分と冷が重なって思えた。

「ごめんなさい…」

涙が頬を伝った。
 
これは何の涙だ。
冷としての涙なのか、私自身の涙なのか?

もう分からない、

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作者名: x他1人 | 作成日時:2020年8月11日 0時

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