命 ページ18
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※痛々しい表現がこれから数話ほど入ります。
｢何の音だ？｣
窓を見ると、何やら慌ただしい人の姿。
俺と店主は顔を見合わせた後、外に出てみるとそこは惨状と化していた。
人の泣き叫ぶ声と向こうから逃げてくる人、そして救急車を求める男性の声。
よく見ると車は渋滞していて、交通事故か何かあったのが伺える。
｢いやぁぁあああ！！！｣
｢誰か！救急車を呼べ！！｣
｢…行ってみよう｣
正義感の強く優しい店主さんは、人混みを掻き分けてどんどん奥へ入っていく。
続いて俺もそこへ向かう。
時間が少しずつ来ているが、今日は練習だけで特に撮影などはない。
だんだん見えてくる事故現場。
中央で人が倒れていて、車が数メートル離れたところで大破していた。
倒れている人の傍で子供が泣き叫んでいる。
親はどこに行ったのだろうか。
店主さんは一目散に子供の所へかけていった。
店主さんの指示で俺は倒れている人の元へ。
『大丈夫ですか？』
うつ伏せで倒れていて、呼吸がしやすいように仰向けにひっくり返す。
どうしてだろう。冷や汗が止まらない。
拍動音が体の中で鳴り響いて、全身からさっと血の気が引いていく。
手で髪を退けると、見知った顔。
大好きな顔。
『っ！Aくん！』
Aくんだ。
頭から血を流し、目を瞑っている。
嫌だ。嫌だ。なんで。
『ダメだ、ダメだ！起きて、』
頬を軽く叩き、体制を変えようと体のあらゆるところを触ると、頭を触った時ぐちょりと嫌な感触が。
手を見ると手は真っ赤に染まっていた。
ガクガクと震える手。
頭から垂れてくる血はどんどん地面へ落ちていき、血溜まりが広がっていく。
『Aくん起きて…こんなとこじゃ…ダメだって……』
血を抑えようとも止まらない。
大好きな笑顔を見せてくれ。
頬を撫でても体温が感じられない。
｢何が…！！｣
店主さんは子供を抱いて、こちらに歩み寄ってくる。
Aくんの姿を見て、子供に見せないように顔を胸に踞せる。
店主さんから見てもAくんの姿は悲惨だった。
恐らく真正面からぶつかったのだろう。
どうして彼が。
失いたくない人を失いそうになる不安と守れなかった悔しさで堪えていた涙がぼろぼろと落ちてくる。
遠くから鳴る救急車の音も耳に入らない。
『Aくん…』
そっと抱き締めても抱き締め返してくれない。
ずっと抱きしめたかったのに。
願いがかなったのに。
ちっとも嬉しくない。
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作者名：ピーナッツバター | 作成日時：2021年8月2日 2時
