勿 ページ14
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｢最近、顔色戻ってきたじゃん｣
『本当？良かった』
メイクヌナにそう言われて心の中で安心した。
メンバーも気を使って、ご飯を沢山作ったり、休憩時間を作ってくれたりしてくれていた為、俺も禁酒してカラットに元気な姿を見せれるよう努力をした。
これでパフォーマンスは完璧にできるだろう。
少し嬉しくて口角が上がりながらも、メイクヌナにメイクを落としてもらった。
メイクを落とした後の俺はまた雰囲気が違う。
けれど、前より確実に顔の赤みが戻ってきた。
｢ジョシュアも準備が出来たな。よし、事務所に帰るぞー｣
控え室にある荷物をまとめ、バンに乗り込む。
隣に座ったのはディノ。
｢…ヒョン、嬉しそうだね｣
『顔色良くなったねって言われたんだ。これで禁酒も終わりかなー』
｢お！じゃあ今日一緒に呑みません？！｣
『あり』
ディノと晩酌の約束を交わし、雨が降っている外を眺める。
珈琲の看板を見る度、いつも少し思い出してしまう。
俺も未練があるなぁと思いつつも、忘れられないのは意識の問題だ。
心の奥で忘れたくないって強く思ってるからこそ、忘れられない。
ふと笑顔が頭の中に浮ぶ。
あの笑顔を見ると泣きそうになるからもう見たくないのに。
胸がキュッと苦しくなって、伝えようのない痛みに襲われる。
『…会いたい…』
｢誰に会いたいんですか？｣
『うおっ！起きてたんだ』
｢そりゃ寝れませんよ。隣のスングァナがめっちゃ凭れ掛かってきて重いんですもん｣
後ろに座っていたハオがそう言った。
もう俺とハオ以外全員寝ていて、よっぽど疲れていたことが伺える。
｢で、誰に会いたいんですか？｣
『え、もしかして口に出てた？』
｢"会いたい"って言ってましたよ。もしかして無意識ですか？｣
『…無意識だったわ』
俺は今、誰に会いたいって言ったんだ？
そう考えると頭に浮かぶのは彼の姿だけ。
違う。もう逃げたんだよ。
｢まさかジスヒョンにそんな相手が居るとはねぇ…｣
『え、ハオにもいるの？』
｢居るわけがないじゃないですか。しかもハオに"も"ってどういうことですか｣
『あっ』
ついうっかり口を滑らせてしまった。
『いやまぁハオに居るのかなあって…』
｢どっちですか。ジスヒョンにそういう相手が居るのか、他の人にいるのか｣
『他の人…かな？』
ハオは俺に疑いの目を向けた。
俺とハオの間に神妙な空気が流れる。
少し気まずいまま、バンは事務所に到着し、俺らは降りることになった。
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作者名：ピーナッツバター | 作成日時：2021年8月2日 2時
