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練習室に戻り、携帯をバッグの中に戻すと後ろからミンギュに肩を叩かれた。
「誰と電話してたんですか?」
『あぁ…いつもお世話になってる人』
「ふーん…心做しか表情が軽くなった要な気がするけど?」
『誰が?』
「シュアヒョン」
『え〜…俺〜?』
「うん。さっきよりも深刻そうな感じが無くなった」
やっぱりミンギュは鋭い。
大きな犬だと言われているけれど、犬も元は肉食動物だ。獲物を狩るには目が良くないといけない。
ミンギュはその点も踏まえて本当に厄介な犬だ。
『まぁ…様態は良くなりそうって』
「よかったじゃん」
『本当に良かった…ってかミンギュは早くハニに飲み物買ってこないと怒られるんじゃない?』
「あ!そうじゃん!シュアヒョンありがとー!」
ミンギュはたまに痛いところを突く質問をする。
それは彼が経験豊富だからか、はたまた人を見る目がいいのか。
次の質問が来る前にミンギュを買い物に行かせた。
ミンギュに知られる前に。
Aくんは良くも悪くも人に好かれる顔と性格だと思う。
俺にとってはそれは余り良くないけれど、客観的に見ればとてもいい事だ。
それだけ真っ直ぐ育ったんだ。
決してミンギュが曲がってるって言いたい訳じゃないけどね。
彼の真っ直ぐな心は絶対俺以外には触れさせないから。
長かった練習が漸く終わった。
足は自然と早歩きになる。
スンチョルから誘われた晩酌も態々断って、一足先に練習室を飛出た。
タクシーを捕まえて、総合病院へ。
窓を眺めながらも心は忙しそうに動き続ける。
少しも落ち着いていられなくて。
震える手と揺れ続ける足。
彼の事を想う度に胸が苦しくて、切なくなる。
それでもずっと好きで、どうしても愛しい気持ちが抑えられない。
彼に夢中なんだ。あの子しか考えられない。
あの子と居る時間だけは本当に幸せで、この世の何よりも大切な宝物。
時間はお金よりも大切だと誰かが言う。
その通りだ。時間はお金では買えない。けれど心も買えやしない。
だからこそ、大切なのではないか。
買えない、簡単に手に入らない。だからこそ、より相手が愛しくて、好きだという気持ちにより拍車がかかる。
俺とAくんは同性で、世間一般的には信じられないものだと思う。
Aくんだって、俺が君を好きなことに気付いてない。
Aくんは俺が君を好きだってことを言ったら一体どんな反応をするのかな…?
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作者名:ピーナッツバター | 作成日時:2021年8月2日 2時