【完結】ぜんぶあげる。【糸師凛】

幸せ ページ28

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「凛くん！凛くんおめでとうっ、凛くん！」

「藤崎！？なんでうちに、母さんっ」


全国大会の決勝戦。

晴れて全国優勝を果たしてクタクタになって帰ったら思わぬ人に抱き付かれると誰が思うだろう。


「凛、おかえりなさい。Aさんね、1番にお祝いしたいからって来てくれたのよ」

「マジかよ」

「だって居てもたってもいられなくて！カッコよかったよ！おめでとう凛くん！」


少し前に出掛けた時、何となく流れで呼ばれるようになった自分の名前が無邪気に連呼される。

思わず口元が緩むのはふわふわとした素材の服が顔をくすぐるからだと言い訳して、自分より華奢な体に腕を回した。


「ありがとう、藤崎」

「ッ…うん、うんっ…おめでとう凛くん！」


こんなに体いっぱい使って喜びと祝福を表してくれる存在が近くにいる事がどれだけ幸せな事なのか、きっとこれは経験しなければ分からない。

俺も今日初めて知ったから。

これで兄ちゃんにちゃんと報告できる。褒めて貰えるかな、いやきっと大丈夫だ。兄ちゃんは世界一優しい。

帰って来たら藤崎のことも紹介したい。

そんなことを考えながら、自分の事のように喜んで涙まで浮かべるその目尻を拭った。


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