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その日はすぐにやってきた。
向こうのリーグも終わり、完全なオフになったであろう頃。梅雨の湿気った空気が街を満たす頃。
もう松葉杖はいらない。自分の足で歩けるから。
新しいワンピースドレスを身にまとい、両親に連れられて色々な所へ挨拶に回る。どこへ行くにも両親が一緒だ。
そしてやっと、御影くんの所へ挨拶に行けた。
「玲王さん、お久しぶり。Aのこと、ごめんなさい。私の不注意だったわ」
「お久しぶりです。大丈夫ですよ。それで、その事でお話があって」
御影くんに目配せされて首を傾げる。
「九條、顔色悪い。ちょっと外出てこいよ」
「え…あ、うん」
「あら、じゃあ私も行くわ。お話は主人に、」
「いえ、お2人に聞いて欲しいんです。九條、1人でも平気だろ?」
あ、これはもしかして。私が1人になれるように誘導してくれてる?
それに気付いて慌てて頷き、心配そうにする両親にひらりと手を挙げてその場を離れた。
少し駆け足でバルコニーへ向かい、窓の向こうに見える人影に目が丸くなる。御影くん、彼に合わせようとしてくれたんだ。
窓の外、バルコニーの柵に体重を預けるその人に駆け寄った。
「冴くん!」
呼んだ声に反応した彼に向かって駆け寄り、思い切り抱き着く。そんな衝撃にも彼はよろけたりせず受け止めてくれた。
抱き締められた腕の中、彼の首に腕を回して頬を擦り付ける。
「会いたかった…!」
「そうかよ」
その声が耳に入るだけで幸せで堪らない。会いたかった。会いたくて死んじゃいそうだった。
そっと離れて顔を見上げると、そこにはいつも通り何を考えているのか分からない真顔がある。
「急に連絡取れなくなりやがって。御影から連絡されるまでどんな思いだったと思ってる。何があった」
「ごめんなさい。えっとね…」
何があったのか説明する私の話を聞いて、彼は次第に顔を歪めていった。
御影くんから話は聞いていたらしい。でも私から直接話すのでは訳が違ったのだろう。
チッ、と大きな舌打ちが落ちる。
「結婚を親に決められるとか…いつの時代だよ」
「パパもママも心配なんだと思う。こんな足になっちゃってから、ずっと」
私は2人に愛されている。それがひしひしと伝わってくるから嬉しくて、でも息が苦しくて。
今日このまま離れたら、また会えなくなるのかな。そう考えると気持ちが沈んでいく。そんな私の手をふと、彼が掴んだ。
「走るぞ」
「え…?」
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瑠璃烏(プロフ) - エリザベス女王さん» そんな風に言って頂けて嬉しいです!玲王は考察の余地を残そうと思って最後まではっきりとしたことは敢えて書いてないので、ご自由にご想像頂ければと思います😌見て頂きありがとうございました! (4月7日 14時) (レス) id: 8bc81fca4f (このIDを非表示/違反報告)
エリザベス女王(プロフ) - どんな気持ちで助けていたのか、、、考えても考えてもまとまりません!冴くんがただひたすらにかっこよくてずっと三途の川を泳いでました!本当に最高でした!!ありがとうございました😭 (4月7日 11時) (レス) id: 2cb2cc3e09 (このIDを非表示/違反報告)
エリザベス女王(プロフ) - 最高でした、、、‼︎主様の前作を読んでそこのリンクから飛んだのですが安定の最高さでした❤️駆け落ち系の話を見たことがなくて不安だったのですが初めてがこんな素晴らしい作品だだだ私は明日やらでも降るのかもしれません笑玲王くんはいったい (4月7日 11時) (レス) @page44 id: 2cb2cc3e09 (このIDを非表示/違反報告)
瑠璃烏(プロフ) - ニアさん» コメントありがとうございます!素敵な考察までして頂けて嬉しいです!2人とも本当にいいキャラですよね! (4月2日 12時) (レス) @page43 id: 8bc81fca4f (このIDを非表示/違反報告)
ニア - この作品を読んでから2人をめっちゃ好きになりました!最後の切ない感じが最高でした…御影くん実は夢主ちゃんのこと好きだったんじゃないか…だから微笑んだんじゃないかとか色々考えていたら切なさときゅんきゅんが止まりません…ありがとうございました!! (4月2日 10時) (レス) id: b8d76587d9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:瑠璃烏 | 作成日時:2024年3月6日 11時