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キスをしたあの日から、3ヶ月。
御影くんとの約束の1年まで、あと3ヶ月になった。
クリスマスのパーティーと初めてキスをしたあの日以来、まだ冴くんには会えていない。
でも試合を見ることは出来るから、両親がいない時にこっそり見たりしている。
そして真夜中。そろそろと自室からバルコニーへ出てスマホを操作し、コール音を聞きながら耳元に近付けると、少しして通話の繋がる音がした。
「も、もしもし」
『もしもし。お前、そっち夜中だろ』
「うん。でもバルコニーだし、大きな声出さなければ大丈夫」
バレたらまずいけど、と苦笑しながら言えば呆れたような溜息が返ってくる。その空気感はもう1ヶ月ぶりくらいのことで、春の夜風にふるりと体を震わせながら笑った。
月に一度くらいのペースで繋げる電話。この時間をこの1ヶ月、毎日楽しみにしていた。
「ねえ聞いて。少しの距離なら走れるようになったの」
『そうか。よかったな』
「もう、ほんとにそう思ってる?」
そう揶揄いながらも、まあ彼は声に感情があまり乗らない人だしなと思って苦笑するに止める。
「ねえ、早く会いたい」
『…いい子で待ってろ。そのうち会える』
「うん…」
ああ、もう時計の針が24時を指してしまう。魔法が解けて、元に戻らなきゃいけなくなってしまう。24時頃、母が様子を見にくるようになったから。
今すぐ会えたならいいのに。でもそれは叶わないから、言われた通りいい子で待っていることにする。
「じゃあ、またね。練習頑張って」
『ああ。…おやすみ』
「おやすみなさい」
電話を切って余韻に浸る間も無く、急いでベッドに戻る。その瞬間、隣の勉強机がある部屋から扉を開く音がした。
「A?起きてるの?」
危なかった。
黙って目を閉じたままでいると、母がこの寝室への扉を開く音がする。ふう、と安心したような溜息が聞こえた。
足音が近付いて、そっと頭を撫でられる。
「気のせいだったのね…」
ちゅ、と音を立てて額に唇が触れる。反射でぴくりと顔の筋肉が動いたけれど、母はそれにくすりと笑っただけだった。
「おやすみ、私のA」
小さな声でそう告げて、母は部屋を出て行った。
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瑠璃烏(プロフ) - エリザベス女王さん» そんな風に言って頂けて嬉しいです!玲王は考察の余地を残そうと思って最後まではっきりとしたことは敢えて書いてないので、ご自由にご想像頂ければと思います😌見て頂きありがとうございました! (4月7日 14時) (レス) id: 8bc81fca4f (このIDを非表示/違反報告)
エリザベス女王(プロフ) - どんな気持ちで助けていたのか、、、考えても考えてもまとまりません!冴くんがただひたすらにかっこよくてずっと三途の川を泳いでました!本当に最高でした!!ありがとうございました😭 (4月7日 11時) (レス) id: 2cb2cc3e09 (このIDを非表示/違反報告)
エリザベス女王(プロフ) - 最高でした、、、‼︎主様の前作を読んでそこのリンクから飛んだのですが安定の最高さでした❤️駆け落ち系の話を見たことがなくて不安だったのですが初めてがこんな素晴らしい作品だだだ私は明日やらでも降るのかもしれません笑玲王くんはいったい (4月7日 11時) (レス) @page44 id: 2cb2cc3e09 (このIDを非表示/違反報告)
瑠璃烏(プロフ) - ニアさん» コメントありがとうございます!素敵な考察までして頂けて嬉しいです!2人とも本当にいいキャラですよね! (4月2日 12時) (レス) @page43 id: 8bc81fca4f (このIDを非表示/違反報告)
ニア - この作品を読んでから2人をめっちゃ好きになりました!最後の切ない感じが最高でした…御影くん実は夢主ちゃんのこと好きだったんじゃないか…だから微笑んだんじゃないかとか色々考えていたら切なさときゅんきゅんが止まりません…ありがとうございました!! (4月2日 10時) (レス) id: b8d76587d9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:瑠璃烏 | 作成日時:2024年3月6日 11時