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2人並んで時折カップをを傾けながら、目の前にあるテレビに流れるサッカーの試合を眺める。
他に見るようなものも無かったから。
「いいなあ…私も事故がなければまだサッカーやってたかも」
「やってたのかよ」
「うん。冴くんのことも知ってたよ。同年代に天才少年がいるって話題になってたから」
「そんな前から知ってんのか」
「ふふっ、実はそうなの」
驚く様子に笑い声を零す。もしかしたらどこかで会ったりしていたかもしれないね、なんて話して。
目の前の画面の中では、天才ドリブラーと呼ばれた選手が自由にコートを駆け回っている。その様子を見て羨ましいと思いながら脚をさすった。
冴くんは静かに私を見ていたけれど、やがてその手が私の脚へ伸びてくる。え、と思う間もなく脚をそっとさすられた。思わず息を止めてしまう。
「どれくらい歩けるようになった」
「えっと…松葉杖無しでも、実は大丈夫。疲れちゃうとまだ危ないから、一応持ってるだけ」
「そうか」
え、え。どういう状況?
顔が近付いてきて、頬に手が添えられる。心臓がうるさいくらいで、ぎゅっと手を握り締めた。
そっと唇同士が触れ合って、目を閉じた。
離れたと思えばまたちゅ、と音を立てて吸うようにしてから離れ、またくっついて。はむように唇を触れ合わせられて驚き、慌てて顔を離した。
「え、えと…あの……」
「嫌か」
「い、いいえ!」
顔が熱い。どうしよう。きっと顔、真っ赤だ。
そっと、首に両腕を回してみた。それは優しく受け入れられて、頭に手が乗せられる。愛しさが溢れてきてぎゅ、と強く抱き付いた。
「すき…好きです、冴くん…」
「ん、知ってる」
頭に唇が落ちる。すり、と顔を擦り寄せた。
魔法がもし使えたなら、このまま時間が止められればいいのに。
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瑠璃烏(プロフ) - エリザベス女王さん» そんな風に言って頂けて嬉しいです!玲王は考察の余地を残そうと思って最後まではっきりとしたことは敢えて書いてないので、ご自由にご想像頂ければと思います😌見て頂きありがとうございました! (4月7日 14時) (レス) id: 8bc81fca4f (このIDを非表示/違反報告)
エリザベス女王(プロフ) - どんな気持ちで助けていたのか、、、考えても考えてもまとまりません!冴くんがただひたすらにかっこよくてずっと三途の川を泳いでました!本当に最高でした!!ありがとうございました😭 (4月7日 11時) (レス) id: 2cb2cc3e09 (このIDを非表示/違反報告)
エリザベス女王(プロフ) - 最高でした、、、‼︎主様の前作を読んでそこのリンクから飛んだのですが安定の最高さでした❤️駆け落ち系の話を見たことがなくて不安だったのですが初めてがこんな素晴らしい作品だだだ私は明日やらでも降るのかもしれません笑玲王くんはいったい (4月7日 11時) (レス) @page44 id: 2cb2cc3e09 (このIDを非表示/違反報告)
瑠璃烏(プロフ) - ニアさん» コメントありがとうございます!素敵な考察までして頂けて嬉しいです!2人とも本当にいいキャラですよね! (4月2日 12時) (レス) @page43 id: 8bc81fca4f (このIDを非表示/違反報告)
ニア - この作品を読んでから2人をめっちゃ好きになりました!最後の切ない感じが最高でした…御影くん実は夢主ちゃんのこと好きだったんじゃないか…だから微笑んだんじゃないかとか色々考えていたら切なさときゅんきゅんが止まりません…ありがとうございました!! (4月2日 10時) (レス) id: b8d76587d9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:瑠璃烏 | 作成日時:2024年3月6日 11時