２９. ページ29
.
クリスマスのパーティーはすぐにやってきた。両親に連れられて松葉杖を使いながら、色々なところへ挨拶に回る。
お手洗いに行ってくるねと2人の着いて行くからという言葉を振り切って抜け出した廊下で、角を曲がった途端に誰かとぶつかった。
「わっ…！」
倒れそうになったのを強く腕を掴まれて引き上げられる。
「す、すみませっ……糸師さん！？」
「何してんだ、1人で」
「抜け出してきたんです。糸師さん、帰ってらしたんですね」
「お前が会いたいって手紙寄越したんだろ」
「え…そのために帰ってきてくれたんですか…？」
確かに手紙は出した。ファンレターとして。でも本当に届くとも、読んでもらえるとも思っていなかったから。
驚く私に彼は不服かと片眉を上げてみせるから、慌てて首を振った。
ニヤニヤと緩む頬を抑えられない。
「ふふっ…そっか」
「ニヤニヤしてんじゃねえ」
「だって」
小声で交わす会話が楽しい。楽しくて嬉しくて、心臓がドキドキしてる。そっか、会いに来てくれたんだ。
「ねえ、いつまでこっちにいるの？」
「あと数日」
その答えに、ぐっと拳を握り締める。どうしよう、断られたら傷付くと分かっているのに止められない。
「どこかでまた…会えませんか？両親には内緒で」
顔を俯けたまま発したその質問に彼は少し驚く気配を見せて、それから首に手をやって答える。
「別にいーけど」
「ほんと！？あのっ、じゃあ明後日とかって…」
「ん。……おい」
「え？」
「A！」
私の背後に目を向けた彼の視線を辿った先で、こちらへ駆けて来る両親の姿に体が硬くなる。聞かれて、ないよな。
駆けて来た母に強く腕を掴まれた。
「行くわよ、A」
「糸師くん、パーティーを楽しんで」
「…どうも」
「ッ…痛い、ママっ…痛いよ…！」
引き摺られるようにして廊下を進むその腕には、跡が残ってしまった。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 168人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
瑠璃烏(プロフ) - エリザベス女王さん» そんな風に言って頂けて嬉しいです！玲王は考察の余地を残そうと思って最後まではっきりとしたことは敢えて書いてないので、ご自由にご想像頂ければと思います😌見て頂きありがとうございました！ (4月7日 14時) (
レス) id: 8bc81fca4f (このIDを非表示/違反報告)
エリザベス女王(プロフ) - どんな気持ちで助けていたのか､､､考えても考えてもまとまりません！冴くんがただひたすらにかっこよくてずっと三途の川を泳いでました！本当に最高でした！！ありがとうございました😭 (4月7日 11時) (レス) id: 2cb2cc3e09 (このIDを非表示/違反報告)
エリザベス女王(プロフ) - 最高でした､､､‼︎主様の前作を読んでそこのリンクから飛んだのですが安定の最高さでした❤️駆け落ち系の話を見たことがなくて不安だったのですが初めてがこんな素晴らしい作品だだだ私は明日やらでも降るのかもしれません笑玲王くんはいったい (4月7日 11時) (レス) @page44 id: 2cb2cc3e09 (このIDを非表示/違反報告)
瑠璃烏(プロフ) - ニアさん» コメントありがとうございます！素敵な考察までして頂けて嬉しいです！2人とも本当にいいキャラですよね！ (4月2日 12時) (レス) @page43 id: 8bc81fca4f (このIDを非表示/違反報告)
ニア - この作品を読んでから2人をめっちゃ好きになりました！最後の切ない感じが最高でした…御影くん実は夢主ちゃんのこと好きだったんじゃないか…だから微笑んだんじゃないかとか色々考えていたら切なさときゅんきゅんが止まりません…ありがとうございました！！ (4月2日 10時) (レス) id: b8d76587d9 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：瑠璃烏 | 作成日時：2024年3月6日 11時
