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23. ページ23

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「っは〜〜…!」



もう外は冬の空気だ。温められすぎた部屋にいた私には心地よい冷たい空気を思い切り吸い込んで空を仰ぐ。

柵に体重を預けて吐き出す息は白い。もう年末なんだから当たり前だけど、寒くなる前にと振り向いた。



「ねえ、私頑張ったの。少しだけだけど、歩けるようになったんです」


「へえ」



それじゃあ、と彼は数歩私から離れて手を差し出す。



「ここまで来てみろよ」



すう、と息を吸い込んで、両手に持っていた松葉杖を柵に寄りかからせる。何の支えも無しに自分の足で地面を踏み締めた。

両手でバランスを取りながら足を踏み出す。一歩、また一歩。歩いている間中ずっと息が出来ないような気持ちだった。

7歩目、8歩目。

すぐそこにいる彼に向かって、最後の一歩を踏み出した。



「ッよし…!」



勢いで思わず抱きつくような形になった私を、彼は咎めずに受け入れてくれる。そのまま崩れ落ちそうになるのを支えられ、また抱き上げられた。

その腕の中、彼の立派な背広を掴んで声を上げる。



「ね、ね!?見てた!?」


「見てた。…よくやった」


「え、へへっ…」



微笑むその顔を見たのがあんまり久しぶりで、同時に今の自分の状況を俯瞰してしまって心臓が早鐘を打ち始める。

赤くなっている顔を見られないように俯いて、口元を手で覆い隠した。



「兄貴…?」


「あ?」



その声にハッとしてそちらを向くと、そこには目を丸くした糸師凛さんが立っていた。



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瑠璃烏(プロフ) - エリザベス女王さん» そんな風に言って頂けて嬉しいです!玲王は考察の余地を残そうと思って最後まではっきりとしたことは敢えて書いてないので、ご自由にご想像頂ければと思います😌見て頂きありがとうございました! (4月7日 14時) (レス) id: 8bc81fca4f (このIDを非表示/違反報告)
エリザベス女王(プロフ) - どんな気持ちで助けていたのか、、、考えても考えてもまとまりません!冴くんがただひたすらにかっこよくてずっと三途の川を泳いでました!本当に最高でした!!ありがとうございました😭 (4月7日 11時) (レス) id: 2cb2cc3e09 (このIDを非表示/違反報告)
エリザベス女王(プロフ) - 最高でした、、、‼︎主様の前作を読んでそこのリンクから飛んだのですが安定の最高さでした❤️駆け落ち系の話を見たことがなくて不安だったのですが初めてがこんな素晴らしい作品だだだ私は明日やらでも降るのかもしれません笑玲王くんはいったい (4月7日 11時) (レス) @page44 id: 2cb2cc3e09 (このIDを非表示/違反報告)
瑠璃烏(プロフ) - ニアさん» コメントありがとうございます!素敵な考察までして頂けて嬉しいです!2人とも本当にいいキャラですよね! (4月2日 12時) (レス) @page43 id: 8bc81fca4f (このIDを非表示/違反報告)
ニア - この作品を読んでから2人をめっちゃ好きになりました!最後の切ない感じが最高でした…御影くん実は夢主ちゃんのこと好きだったんじゃないか…だから微笑んだんじゃないかとか色々考えていたら切なさときゅんきゅんが止まりません…ありがとうございました!! (4月2日 10時) (レス) id: b8d76587d9 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:瑠璃烏 | 作成日時:2024年3月6日 11時

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