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今はシーズンオフ。だから2人はこちらへ観光しに来たらしく、近くだからとこの家に寄ってくれたらしい。
冷蔵庫に多めに材料を入れておいて正解だった。
3人が腰掛ける食卓に料理を並べると、3人揃って手を合わせた。
「いただきまーす!」
「いただきます」
「はい、召し上がれ」
「はあ…」
糸師くんの重い溜息に苦笑する。
2人が美味しい美味しいと言って食べてくれるからこちらも嬉しくなる。張り切って作って良かった。
その間に洗濯物をまとめて洗濯機を回し始め、埃の立たない拭き掃除をやってしまう。
台所の汚した所を布巾で擦っていると、蜂楽さんが私へ向けて声を上げた。
「家守サンはいつからこのお仕事やってるの?」
「このシーズンオフからやらせて貰ってます」
「ほえ〜。なんか凛ちゃん、こういうの『ぬりぃ』とか言いそうなのにね!」
「うるせえ」
楽しそう。糸師くんはめちゃくちゃ顔顰めてるけど。
「ハウスキーパーさんって実際どうなの?やっぱいいもん?」
「当たり前だろ。脳みそ詰まってねぇのか」
「辛辣ぅ……」
掃除を続けながら思わず笑ってしまう。本当に、まるで学校にいるみたいに楽しい。
そして糸師くんが私の仕事を「いいもん」だと捉えてくれている事が嬉しかった。その声を聞けてこそ、やり甲斐があるというものだ。
汚れた布巾を置いて、食器を下げに来てくれた糸師くんからそれらを預か…ろうとして。
糸師くんはそのまま食器を渡してくれない。
「ん…?いいよ、私が洗うから」
「手伝う。…人増やして悪かった」
「そんなの全然。大丈夫だから、お二人と話してて?」
せっかくの時間なんだから、糸師くんには2人と楽しんで欲しい。
そう伝えると彼は眉を顰めて何か考える素振りを見せたけれど、やがて頷き引き下がった。
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作者名:瑠璃烏 | 作成日時:2024年1月27日 23時