9. ページ9
.
『男は18歳から、女性は16歳から結婚できるんだよ。僕たちは2歳差だから、すぐ結婚できるね』
『結婚…結婚かぁ』
『Aは、いや?』
『ううん、嬉しいよ。待たなくていいんだもん』
『よかった。じゃあ…僕が18になって、Aも16歳になったら、すぐに結婚しちゃおうか』
『うん。約束ね』
笑い合って絡めた小指。その隣の指に指輪を嵌めて、2人は幸せそうに笑っていた。
「ん……」
水底から掬い上げられるように意識が浮上して、そのまま目を開いた。時計を見ると、目覚ましが鳴るまであと5分。
幼い日の約束。あの光景を、今でも夢で見る。
もう戻っては来ない、夢のような日々。
起き上がって布団を剥ぎ、いつも通りにカーテンを開く。窓も開けると湿気った空気が流れ込んできた。
「今日は…」
昼からのお仕事だから、そんなに時間がない。
鳴る前に目覚ましを止めて、着替えを取りにクローゼットを開いた。
*
「こんにち、は…?」
「あ、初めましてー!蜂楽廻でっす」
「初めまして。潔世一です。お邪魔してます」
「あら…」
仕事をしに糸師くんのお家へ行くと、いつもはいない2人がリビングで寛いでいた。
もちろん2人の事は知っている。糸師くんがブルーロックにいた頃からの友人(?)で、どちらも世界で活躍する選手たちだ。
持っていた荷物を台所に下ろして姿勢を正す。
「初めまして。こちらでハウスキーパーをしています、家守Aです」
「ハウスキーパーかぁ〜!凄いね凛ちゃん!」
「別に。てかテメェらの飯はねえぞ」
「大丈夫。ちゃんとお二人の分も作れると思う」
「そんなのいい。てか仕事それだけじゃねえんだよ。掃除の邪魔だ。やっぱ帰れ」
「凛ちゃんひどーい!」
そんな学生みたいな掛け合いに笑顔が溢れた。
.
43人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:瑠璃烏 | 作成日時:2024年1月27日 23時