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少しずつ、帰ったら夕食と共に人が待っている生活に慣れてきた。
「ただいま」
「おかえりなさい。今日は中華風の炒め物にしてみたよ」
「ああ。手ぇ洗ってくる」
「はーい」
台所で使った調理器具を洗いながら口を開く家守に一言告げて洗面所へ向かう。
掃除を頼むようになってからは、どこもかしこもピカピカに磨かれている。それは洗面所も同じことだ。
手を洗って食卓につき、もくもくと食べ始める。
その横で家守は洗濯物を畳み始めた。
「そういえばね、猫を飼おうと思うんだけど」
「猫？」
「そう。なんだか寂しくて。実家で飼ってたから」
「…好きにすりゃいい」
「ふふっ、そうだよね。今度のお休みにペットショップ行ってこようかな」
こういう何でもないやり取りをするのを、普段なら面倒くさいと思うのに。
そう思わないのはやっぱり、昔からの知り合いだからだろうか。
＊
____それは突然の事だった。
日本では梅雨と呼ばれる、雨の季節。
その日は家守が休みを取っていて、昼も夜も作り置きのおかずを食べた。
遅めの夕飯を食べ終えてシンクに食器を置いた時、突然インターホンが鳴って顔を上げた。
こんな時間に一体誰だと訝しく思いながらモニターを覗き込んで、そこにいた姿にハッと息を飲み込む。
慌てて出た玄関。扉を開けた先には。
「なに、してんだ…」
呟くように落とした声が雨音に掻き消される。
そこには、全身びしょ濡れになった家守が俯いて立っていた。
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作者名：瑠璃烏 | 作成日時：2024年1月27日 23時
