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もうすっかり夏も終わってしまった。


ほとぼりが冷めるまでには数ヶ月という時間が必要だった。

その間私はいつも怯えて外に出るしかなかった。マスクと帽子は必需品。素顔を見せたらどうなってしまうのか、考えるだけで恐ろしい。

狭い世界での話だという事は分かっているつもりだ。世界中の人間が私の事を責めようとしている訳ではない。

でも、怖かった。


日本では父や御影さんの力もあったのか一足先に事態は収まったようだったが、私が住んでいるのは日本ではない。


『ブス』

『リンに相応しくない』

『女ならもっとマシな女が良かった』


そんな言葉たちを目にする度に、心臓を突き刺されたような痛みに襲われる。



「燐くん…」



燐くんがいたなら、この苦しみもきっと和らいだ。燐くんがいたなら。燐くんが……

燐くんの事で頭がいっぱいになって、涙がじわりと溢れ出てくる。



助けて。燐くん。











「う……」



またいつの間に眠っていたんだろう。

ぼんやりと目を開いて、目の前にあったスマホが知らせる一件の電話通知に目を瞬く。

糸師くんから。

ドキリと心臓が跳ねた気がした。前回は情緒不安定な時に一方的に切ってしまったから、今回はどんな風に話したらいいんだろう。


何度かコールが鳴って、プツリと通話が繋がる音がする。



「も、もしもし…?」


『家守。うち、来れるか』


「え…?」


『住所送る。金出すからタクシーで来い』


「え、え…?」



何も理解できないまま通話が切れる。

タクシーで、これから送られてくる住所に向かえばいい、ってこと…?

遅れて事態を理解して、慌ててクローゼットの扉を開いた。


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作者名:瑠璃烏 | 作成日時:2024年1月27日 23時

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