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家守との写真をパパラッチに撮られた。
盗撮にも近しいそれが世間に晒されると、ネットの海には一瞬でそれが広がっていった。
それは日本も例外ではない。
『なにこの女』
『マジか!凛選手恋人いたの!?』
『凛選手はこういう話ないと思ってたのに!』
どいつもこいつも勝手なことばかり。
どこから聞き及んだのか、俺と家守の馴れ初め話なんて物まで出回っている。全てデマだが。
電話を掛けても出ない家守が今どうしているのか分からなくて、なぜか胸がザワザワする。
何度目かの家守への電話。
何コールかが鳴り響き、ついにプツリと電話の繋がる音がした。
『もしもし、糸師くん…?』
「もしもし。さっさと出ろ。何かあったのかと…」
『心配してくれたの?ふふっ、糸師くんらしくないね』
「そんなこと言ってる場合かバカ。家までパパラッチ着いてねぇだろうな」
『大丈夫。まだ外には出られてないけど、』
ニケと2人で静かにしてるよ。
その声に滲む不安を隠し切れていない。家守が不安がっているという事実に胸が焼かれるような心地がした。
そんな思いをさせたかった訳じゃないのに。ようやく家守が1人で立てるようになってきた所なのに。
よく分からないまま、口調だけがキツくなる。
「なに笑ってんだお前」
『だって……っもう、笑うしかないじゃない…!』
泣きそうな声が返ってきて、ハッと息を吸い込んだ。
違う。こんなことを言いたい訳じゃない。
『ネットでもあることないこと書かれて、今はもう素顔で外なんか歩けない…こんなの、笑わなきゃやってられない…!』
「家守っ、」
『ッごめん、また連絡するから』
涙に震える声がプツリと途切れた。
ーー違う。そんな風に泣かせたかった訳じゃないのに。
「くそッ」
ままならない感覚に舌打ちを落として、スマホを放り投げた。
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作者名:瑠璃烏 | 作成日時:2024年1月27日 23時