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それからほとぼりが冷めるまで、暫くの間は私の仕事は休みになった。
パパラッチにつけられていた事で彼の部屋に入る私の姿までバッチリ撮られてしまっていて、とても仕事なんて出来る状態じゃない。
糸師くんは取り敢えず選手寮に入り、次はタワーマンションに引っ越すと言う。
雨の音が響いている。
「はあ……」
「ンナ〜」
「ニケ…どうしよう、私…」
まさかこんな事になるなんて。
もし外であの写真の女が私だと知れたらと思うと怖くて、ずっと家に引き篭もっている。
だって顔まではっきり写っていたから。
「燐くん…」
私、どうしたら良いんだろう。
確かに糸師くんのことは好きだ。でも、こんな事にしたかった訳じゃない。彼には自由にのびのびとサッカーをやっていて欲しかった。
雨が、やまない。
*
いつの間に眠っていたのか、ふと意識が引き上げられて目を開いた。
布団に入らずに眠ってしまったからか、クーラーのせいで体が冷えている。
何とはなしにスマホを確認して、何件も電話が入っていた事に驚く。確認するとそれは全て両親からの電話で。
驚いて電話を掛け直してみたら、すぐに父が出た。
「もしもし、お父さん?」
『A!ニュースを見たよ、大丈夫なのか!?』
「い、今のところは、大丈夫。怖くて、外には出られてないけど…」
『良かった…御影さんにも協力して貰って、日本での情報操作は何とかなりそうだから。もう少し頑張ってくれ』
「情報操作って…そんなのいいのに」
『大切な一人娘をこんな形で晒されて大丈夫な訳ないだろう。ああ、お母さんにも変わるから』
「あ…お父さ、」
『A!大丈夫なの!?』
「お母さん…」
必死な様子でこちらに呼び掛ける母に心配いらないと返して宥めながら、内心で溜息を吐く。
両親は燐くんの事があってから一層、私に甘くなった。過保護が過ぎる。
情報操作なんて怖いことしなくていいのに。
母と何となく会話をしながら、糸師くんにも一度連絡するべきかなと頭の隅で考えた。
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作者名:瑠璃烏 | 作成日時:2024年1月27日 23時