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「す、ごい……!」
夏の熱気と人の熱気で茹で上がりそう。
帽子の下から額を滑り降りてくる汗を拭って、得点の瞬間には思わず立ち上がっていた。
試合は糸師くんのチームが3-0の快勝。その内2点は糸師くんの得点だった。
『リンがヤバかったな!』
『はい、本当に!』
糸師くんのサッカーは綺麗だった。なのに時折ぐちゃぐちゃになるようなサッカーもするから驚いてしまった。
サッカーって面白いんだな。
これをきっかけにサッカーにハマってしまいそう。
大きなプラスチックのカップに残ったビールを飲み干す。
そこにちょうど、選手たちがファンサービスのために歩いてきた。
慌てて髪の毛を少し整え、帽子を被り直す。もう汗だくだからメイクは気にしたら負けだろう。
『リン!サインサイン!』
『リン〜!!』
『リン!リン!!』
わあ、凛コールが凄い。
その熱気に圧されて縮こまる。一番近くが良いと言ったら本当に一番前の席を取ってくれたので、後ろからの圧が凄い。
私は仕事で会えるんだから我慢しなくちゃ。
「え、ちょ…わっ…!?」
背後からドンッと押されてつんのめる。フェンスを越えそうになったのを力強い腕で支えられた。
あれ、これこの前もあったな。
『おい!危ないことすんな』
「い、糸師くん…!」
「大丈夫かよ」
「う、うん、平気。ありがとう」
顔が近いって…!
背後からの圧と視線が怖いくらいで、慌てて席に戻る。
私達の関係がバレたらどうしようという、あり得ない心配で心臓がうるさかった。
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作者名:瑠璃烏 | 作成日時:2024年1月27日 23時