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どうしよう、燐くん。

私、糸師くんを好きになっちゃったかもしれない。どうするのが正解なの?教えて燐くん…



家に帰って1人になると、悶々と考え込んでしまう。

最近、糸師くんに対する私の気持ちが少しおかしい。ちょっとした事でドキドキして、顔が熱くなって。

これの正体を、私は知っている。



「恋、だよね……?」


「ミャ〜」



どうしよう。仕事相手っていうだけなのに、こんなこと。

ーーだってあの人は、晴れを待つ私に傘をくれた。雨でびしょ濡れになった私にタオルを掛けてくれた。

ただそれだけで、好きになるには充分すぎた。

でも、



「燐くん…」



大切な指輪を取り出して、強く握り込む。

一度は結婚の約束までした大好きな人。大切な人。



「いいの…?」



その思い出を全部しまい込んで、次に進んでもいいのかな。





分からないまま、季節は夏へと傾いていった。











「わ…すごい熱気…!」



糸師くんからもらったチケットで見に来たら、明らかに私のようなにわかとは違う人達の集まりで本当に驚いた。

糸師くんの所属するチームのホームで行われるから、相手チームからすると完全アウェー空間。

両隣を屈強な男の人に挟まれて、縮こまって座っているしか出来ない。



『ヘイ!君もビール飲むだろ?』


『あ、いえ、私お酒はダメなので…』


『そんなこと言わずに!姉ちゃん、もう一杯この子にちょうだい!』


「え、あ……」



ダメだ。通じてない。

まあ悪酔いするタイプという訳でもないので別にいいけど…

今日ばかりは無礼講だと思い切ってビールをゴクゴク飲み込めば、その調子だと野次が飛ぶ。



「ぷはっ!あ、案外おいしい…」


『ん?なんだって?』


『ああ、いえ。お兄さんは今日はどちらから?』


『俺はすぐそこに住んでるんだよ。姉ちゃんは?』


『私も近くに住んでます。見に来るのは初めてなんですが』


『そうなのか!楽しんでいけよ!』


『はい、ありがとう』



そんな事を話している間に、ホイッスルの音によって試合が始まりを告げた。



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作者名:瑠璃烏 | 作成日時:2024年1月27日 23時

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