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ニケを連れてもう一度やってきた糸師くんのお家。

甘えるニケは糸師くんに任せて、私はキッチンに立つ。

野菜をトントンと刻みながら問い掛けた。



「朝、いつも燐くんの写真に挨拶するの。それとか、やめた方がいいのかな」



変わっていこうと思うならやめた方が良いんじゃないかと思っていた。でも。



「突然なにかを変える必要なんか無い。少しずつでいい」


「そっか…」



そう言ってくれて心が安らいだ。急に変わる必要は無いんだ。少しずつでもいいんだ、って。











翌日、起きたら何かが決定的に変わっているんじゃないかと思ったけれど、そんな事は無かった。

それにいつも通りだとため息を吐いて、でもやっぱりどこかが違うなと思い直す。

リビングへ向かって、カーテンと窓を開けて空気を入れ替える。湿気った空気が髪を揺らした。



「ナァーン」


「ニケ…」


「んみゃ〜」


「ふふっ…おはよう、ニケ。燐くんも…おはよう」



チェストの上、紫陽花をバックに優しく笑う燐くんにも挨拶を。


変わっていくって簡単な事じゃない。


でも、少しずつでいいって言ってくれた。急に何かを変える必要は無いんだって。

その言葉があっただけで、自分を強く持っていられる気がする。

糸師くんの事を思い出すと頬が緩む気がして、パンッと両手で頬を挟んだ。



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作者名:瑠璃烏 | 作成日時:2024年1月27日 23時

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