【完結】晴れを待つ【糸師凛】 (ページ15)

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１５. ページ15

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『A、おはよう』

『おはよう燐くん。ねえ見て、この髪飾り。お母さんがくれたの』

『よく見せて。…うん、よく似合ってる』

『ふふっ、ありがとう』

藤田燐くん。

幼馴染で、親同士が結婚の約束を取り付けた、謂わゆる『許嫁』の関係。

2歳年上の彼は優しくて、私から見たらすごく大人に見えていた。

優しくて、大人っぽくて、成績も良くて。

誕生日に贈られた銀のリングは、私達の宝物だった。

あの日のことは、よく覚えていない。

雨が降っていた。

土砂降りで、車に乗っていたら前も見えないほどの豪雨。学校も休みになっていた。

でもその日は家族同士の会食があって、多忙な両親は次がいつになるか分からないからと予定をずらす事はしなかった。

『お父さん、燐くんたちまだ来ないの？』

『遅いな…何かあったのかもしれない。連絡してみよう』

『うん…』

『A、大丈夫よ。きっと雨で渋滞しているだけだから。そんな顔しないで』

この日のために新調したワンピースをグッと握り締めて、電話を掛ける父を待っていた。

やがて父が、血相を変えて戻って来て。

_____事故に遭ったのだと聞かされた時、心臓が止まるかと思った。

『うそ…嘘でしょ、お父さん…？そんな、だって…！』

『A…！』

『うそ、うそ！嘘って言ってよ！ねえ！』

交通事故だった。視界不良によって引き起こされた追突事故に巻き込まれて、燐くんは死んだ。

そんな訳ない。だって今日、楽しみだねって、1時間前には電話で話していたのに。

現実を受け止められなかった。

あの日からずっと、私の時間は止まったままだ。

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