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家守が猫を飼い始めた。

なんでも『運命を感じた』んだとか。



「ニケ、こっち来い。全身埃まみれになるつもりかお前」


「ミャ〜」


「みゃーじゃねえ、こっち来いってんだよ」



勝利の女神から名前を貰ったというのにこいつは随分な聞かん坊で、もう毎日が格闘の日々。

家で1匹は寂しいだろうと、仕事をする家守に連れて来ていいと言ったというのに。

こいつに寂しいなんて殊勝な気持ちは無いんじゃないかと思う。



「こら、ニケ。糸師くんの言うこと聞きなさい。迷惑かけないの」


「んにゃ〜お」


「こいっつ……!!」



かわい子ぶりやがって。

擦り寄ってくるニケを抱き上げて膝に乗せてやると、今度は腹を見せて寝転がる。どういう情緒してやがる。

すべすべの黒い毛並みをなぞってやれば楽しそうに指先へ戯れついてくる。



「おい家守。こいつ情緒やべえだろ」


「そうなんだよね、それがちょっと心配で。病気じゃないよね」


「ンなわけねぇ」



料理をする家守から膝の上のニケへ視線を移す。


きゅるん。


きゅるんじゃねえよ!!

明らかにこいつは人間様を舐めている。舐めプかましてんじゃねえぞ。


イラつく気持ちはあれど、やはりその毛並みを撫でていればアニマルセラピーで穏やかな気持ちになるんだから不思議だ。

こいつを飼い始めてから家守もどこか変わった気がする。

どこがと言われると具体的に言えはしないが。



「ミャ〜ウ」


「おいこら、隙間に入ろうとすんな」



服の隙間に入り込もうとするのを捕まえて阻止した。



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作者名:瑠璃烏 | 作成日時:2024年1月27日 23時

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