【完結】飛び降りようと思うのです【潔世一】

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時間はあるようでない。

疲れたと思っても、休みたいと思っても、時間は刻一刻と残酷にも過ぎ去っていく。



「お疲れ。ドリンク」


「さんきゅ」


「ありがとAさん」



人生という長い道のりの中、学生の時間はすごく短くて尊いものなんだと今まで以上に感じる。

頑張っている部員のためなら、どんな仕事も率先してやりたいと思う。1分1秒でも長く練習して欲しい、休憩して欲しい。

あんなに持て余していた時間が今は誰かのための時間になって、バイトだってやめて部活に打ち込む日々。

両親には謝った。バイトをやめて部活に専念したいと。そうしたら何も言わずに頷いてくれた。



「Aさん、アイシングある？」


「怪我？見せて」


「捻っちった。痛え」


「冷やしておいて。後でテーピングするから」


「ありがと」



アイシングを手渡して冷やしているのを見ながら汗を拭う。夏の大会、次の試合である準々決勝に向けてみんな熱が入っている。

去年のこの時期なんてバイトか家でボーッとするかのどちらかだった。まさかこんな風に必死になるなんて、思ってもみなかった。



「テーピングする。動かないで」


「おう」



練習に戻っていく選手達を見送って高里くんの足元に座り込み、最近覚えたテーピングを施す。



「上手い。なんかやってた？」


「何も。ついこの間覚えたの」


「マジか。努力家だ」


「そんなことない。それは皆んなのことだよ」



やっぱり努力家だ、なんて笑うその言葉を聞きながら、テーピングを終えた足をそっと叩いた。



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