おまけ.6 ページ49
.
「面白かった〜」
「ね。配信されたらもう一度見直そうかな」
「Aさんも楽しめたならよかった!」
「うん。すごく楽しかった」
スクリーンを出て廊下を歩きながら、身だしなみは大丈夫かなと少し不安になる。
「ごめん、化粧室行ってくるね」
「あ、俺も行っとこ」
結局2人でお手洗いに別れて入り、トイレを済ませて鏡と向かい合う。髪の毛が少し乱れているのを直して、化粧ポーチの中に指先を突っ込んだ。
「どうしよっかな…」
母がプレゼントしてくれたリップ。ナチュラルなカラーで、今日の服とも多分合いそう。悩んだ末に、薄く付けることにした。
僅かに色付いた唇を擦り合わせて、パッと開く。
どうかな。気付いてくれるかな。
ドキドキしながらお手洗いを出ると、潔くんが待っていた。
「お待たせ」
「ん、大丈夫そ?…あ、リップつけた?」
「あ…うん。ど、どうかな」
「可愛い!よく似合ってるよ」
もう、この人はなんでこう。こういうのさらっと言えるタイプなんだ。
嬉しすぎる言葉に頬に熱が上るのを感じながら、ありがとうと笑った。
*
近くのカフェに入ってお茶をすることになり、カフェオレとショートケーキを頼んで注文を待つ。
潔くんもカフェオレとモンブランを頼んだ。
「ケーキなんて、久しぶりでしょ?」
「おう!めっちゃ楽しみ」
「だよね。モンブラン好きなの?」
「特別好きってほどじゃないけど、今はそんな気分だっただけ。ね、ひと口交換しない?」
「いいよ。…はい」
ひと口分フォークに乗せて差し出すと、潔くんは口を開けてパクリと食べる。その様が可愛くて、思わず頬が緩んだ。
「Aさんも、はい」
「あ……ん。うん、美味しい」
栗の風味がちょうどよくて生クリームも甘すぎず、とても食べやすい。また来る時はモンブランにしてみようかな。
2人してもぐもぐと口を動かし、食べ終わってから潔くんが口の周りを拭きながらこちらを窺う。
「俺がいない間、大丈夫だった?」
「大丈夫。心配しないで」
「ほんと?ならいいんだけど。ずっと心配でさ」
「平気だよ」
カフェオレを飲み込んで、潔くんは笑う。
「また来ような!」
「うん、絶対」
笑い合って、手を繋いだ。絶対にまた来ようねって約束を交わして。
end.
138人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
瑠璃烏(プロフ) - さっちゃんさん» コメントありがとうございます!悪女書くの苦手で…結局いい子になっちまったです。悪女断罪系もいつか書きたいです!閲覧ありがとうございます!! (5月6日 20時) (レス) id: 8bc81fca4f (このIDを非表示/違反報告)
さっちゃん(プロフ) - 途中から入ってくるマネって、だいたい悪女多いからそのタイプかぁ…とか思ってたらめっちゃいい子だった!面白かったです! (5月6日 17時) (レス) @page50 id: c5a0fb1f72 (このIDを非表示/違反報告)
瑠璃烏(プロフ) - 苺さん» ありがとうございます!悪女を書くにはまだ修行が足りない……いつか書きたいと思ってます! (2月13日 8時) (レス) id: 8bc81fca4f (このIDを非表示/違反報告)
苺(プロフ) - ひとみちゃん、悪女かと思いきやかなりいい子で😩❤️❤️❤️人間味ある感じ?!とても好きです。。!!! (2月13日 2時) (レス) @page41 id: 31ed2e1075 (このIDを非表示/違反報告)
瑠璃烏(プロフ) - 彗さん» ありがとうございます! (2月6日 11時) (レス) id: 8bc81fca4f (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:瑠璃烏 | 作成日時:2024年1月21日 10時