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「ひとみ、一緒に食べよう」
「うん!」
話さなきゃいけない。潔くんとのことを。
2人でお弁当を持ち、人のいない屋上前の階段に並んで腰掛ける。一緒にいただきますと手を合わせてお弁当に手をつけた。
久しぶりの、母のお弁当。具材はどれも手作りで、冷めているのにどこか温かい。それをごくりと飲み込んで口を開いた。
「あのね」
「うん」
「潔くんとのこと、なんだけど」
「…うん」
さっきから目は合わない。それに胸がザワザワしながらも息を吸い込んで声を絞り出す。
「恋人に、なったの」
お箸を持つ手が止まって、ひとみは暫くじっと黙っていたけれど、その内大きく息を吸い込んでからゆっくりと吐き出した。
くしゃりと歪んだ顔が私の方をやっと見る。
「っ…そっか!」
「うん。…ごめん、ひとみ」
「いいよ。気にしない…って言ったら、嘘になるけど。決定権があるのは潔くんだもん。私から何か言えることじゃない」
「でも…ごめん。ひとみの気持ち、知ってたのに」
いいって、と言う声が震えを帯びる。堪らずにその体を抱き締めた。喉を震わせてひとみは私の体を抱き締め返し、目元を肩口に押し付ける。
啜り泣く声を耳元で聞いて、ぎりぎりと胸が締め付けられながら抱き締める力を強めた。
「ひとみ…大好き」
「っ…わたしも、大好き」
目元を腫らしてひとみは笑った。
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瑠璃烏(プロフ) - さっちゃんさん» コメントありがとうございます!悪女書くの苦手で…結局いい子になっちまったです。悪女断罪系もいつか書きたいです!閲覧ありがとうございます!! (5月6日 20時) (レス) id: 8bc81fca4f (このIDを非表示/違反報告)
さっちゃん(プロフ) - 途中から入ってくるマネって、だいたい悪女多いからそのタイプかぁ…とか思ってたらめっちゃいい子だった!面白かったです! (5月6日 17時) (レス) @page50 id: c5a0fb1f72 (このIDを非表示/違反報告)
瑠璃烏(プロフ) - 苺さん» ありがとうございます!悪女を書くにはまだ修行が足りない……いつか書きたいと思ってます! (2月13日 8時) (レス) id: 8bc81fca4f (このIDを非表示/違反報告)
苺(プロフ) - ひとみちゃん、悪女かと思いきやかなりいい子で😩❤️❤️❤️人間味ある感じ?!とても好きです。。!!! (2月13日 2時) (レス) @page41 id: 31ed2e1075 (このIDを非表示/違反報告)
瑠璃烏(プロフ) - 彗さん» ありがとうございます! (2月6日 11時) (レス) id: 8bc81fca4f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:瑠璃烏 | 作成日時:2024年1月21日 10時