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「A!あぁっ、A!A…!」
「お、かあ、さん…?」
「ごめんなさい、Aっ…ごめんなさい、ごめんなさい…」
「飛び出したりして…心配したんだよ、A。あと少し遅かったら捜索願いを出すところだった…」
どうして抱き締められてるんだろう。お母さんが、私を、抱き締めてる。そして父が私たちを更に外から抱き締めている。ぎゅう、と強く締め付けられて苦しいくらい。
潔くんとお父様にお別れを言って扉を開けた瞬間のことだ。ずっと待っていたのかと思うともっと謎が深まる。
だって2人は私のことなんて愛していないのに。
「どう、して…」
「ごめんなさい、A。聞かせてしまったのよね。でもお願い、聞いて。確かに私達にとってお姉ちゃんは大切だった。でもね、私はあなたのことも愛してる。愛してるの…」
抱き締められたまま告げられる言葉をどう受け取ればいいのか分からないまま、ただ抱き締められ続ける。
「どう接していいか分からなかったの。お姉ちゃんが死んでしまって…Aは元気で…」
「…そう」
「でもAのことも愛してる。たった1人の娘だもの。本当よ、信じて」
その言葉になんと返していいか分からないまま嘲笑を零す。
「嘘つき。私なんかどうなったって、2人は気にもしないでしょ」
「Aっ…!」
「冗談でもそんなことを言うのはやめなさい。A、今まですまなかった。でもお母さんの言った通りだ。自分の娘を愛していない訳がないだろう?」
「そんなの…」
分からない。本当のことだとして、どうやってその言葉を信じればいいんだろう。
「…どう信じたらいいか、分かんない」
「信じさせてみせるから。絶対に。お願いA、許してくれなんて言わないわ。でも謝らせて。今まで…傷付けて本当にごめんなさい」
「……」
「A…」
「あなたまで失ったらって思ったら、私は…っ」
『絶対』なんて絶対、信じられない。それは変わらない。
でもこんなに必死に泣きながら抱き締めてくれるこの温もりを信じられたら。きっとそれは幸せなことだろう。
痛いくらいに抱き締める母の背中に、そっと手を回した。
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瑠璃烏(プロフ) - さっちゃんさん» コメントありがとうございます!悪女書くの苦手で…結局いい子になっちまったです。悪女断罪系もいつか書きたいです!閲覧ありがとうございます!! (5月6日 20時) (レス) id: 8bc81fca4f (このIDを非表示/違反報告)
さっちゃん(プロフ) - 途中から入ってくるマネって、だいたい悪女多いからそのタイプかぁ…とか思ってたらめっちゃいい子だった!面白かったです! (5月6日 17時) (レス) @page50 id: c5a0fb1f72 (このIDを非表示/違反報告)
瑠璃烏(プロフ) - 苺さん» ありがとうございます!悪女を書くにはまだ修行が足りない……いつか書きたいと思ってます! (2月13日 8時) (レス) id: 8bc81fca4f (このIDを非表示/違反報告)
苺(プロフ) - ひとみちゃん、悪女かと思いきやかなりいい子で😩❤️❤️❤️人間味ある感じ?!とても好きです。。!!! (2月13日 2時) (レス) @page41 id: 31ed2e1075 (このIDを非表示/違反報告)
瑠璃烏(プロフ) - 彗さん» ありがとうございます! (2月6日 11時) (レス) id: 8bc81fca4f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:瑠璃烏 | 作成日時:2024年1月21日 10時