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「A!」



パンッと乾いた音がして左頬に熱が走り、視界がぐわんと横へずれた。続いて体を締め付ける感覚に、何が起こったのか分からないまま瞬く。



「バカ、バカ!なんでこんなことしたの、バカっ…!」



うわぁあーんと子供みたいな泣き声を上げるひとみの背に恐る恐る手を回してみたら、もっと強く抱き締められる。

ひとみの肩越しに潔くんを見やればスマホを振って示されて、私がお風呂に入っている間に呼んだのかとようやく思い至る。

ひとみは体を離して私の両頬を捕まえ、真っ直ぐに視線を合わせた。



「ごめん。Aのこと追い詰めたの、私だよね。本当にごめん、許してA…っ」


「ひとみ…」



出した声は泣きすぎて鼻声な上に掠れていて酷いものだ。



「ひとみのせいじゃない。他にも…色々、あったから」


「そう…。でも、ごめん。避けたりして、傷つけた。許してくれる…?」


「…元から怒ってない」



A…!とまた泣きそうな顔をくしゃりと歪めて、強く抱き締められる。そっとその背中をさすった。

コンコンとノックの音が響いて、奥さんが顔を出す。



「ご飯、食べて行くでしょう?」


「え…いえ、私は」


「食べてってよ。母さんのカレー美味しいんだ」


「私も食べたいです!ほらAもっ」



ひとみと潔くんにそれぞれ両手を引かれて、泣きじゃくった部屋から連れ出された。







私に何があったとか何も聞かずに、潔夫妻はいつも通りに笑顔で話してくれた。その温もりが心地よくて、幸せで。

送ってもらう車の中、先にひとみの家へ送り届けてから今度は私の実家へ向かいながらぼんやりと窓の外を眺める。夜の街明かりが少し眩しい。

帰ったら何を言われるだろう。大したことは言われないかな。あの2人は私なんかのことを心配なんてしない。

それを考えるとまた気分が落ち込んできて俯く私の手を、ふと暖かな指先に包まれた。



「…潔くん」


「大丈夫?うち、泊まってく?」


「ううん…大丈夫。ちゃんと、話すよ」


「そう…?」



伸ばされた手が乱れていたらしい前髪を直してくれるのに目を細める。私たち、恋人になったってことでいいのかな。キスしてくれたし。

手の甲を包む指先と、そっと指を絡め合わせる。きゅ、と力強く握る手が温かかった。

落ち込みかけていた気持ちがまた上向くのを感じながら、そこを左ですと運転席に声を掛けた。



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瑠璃烏(プロフ) - さっちゃんさん» コメントありがとうございます!悪女書くの苦手で…結局いい子になっちまったです。悪女断罪系もいつか書きたいです!閲覧ありがとうございます!! (5月6日 20時) (レス) id: 8bc81fca4f (このIDを非表示/違反報告)
さっちゃん(プロフ) - 途中から入ってくるマネって、だいたい悪女多いからそのタイプかぁ…とか思ってたらめっちゃいい子だった!面白かったです! (5月6日 17時) (レス) @page50 id: c5a0fb1f72 (このIDを非表示/違反報告)
瑠璃烏(プロフ) - 苺さん» ありがとうございます!悪女を書くにはまだ修行が足りない……いつか書きたいと思ってます! (2月13日 8時) (レス) id: 8bc81fca4f (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - ひとみちゃん、悪女かと思いきやかなりいい子で😩❤️❤️❤️人間味ある感じ?!とても好きです。。!!! (2月13日 2時) (レス) @page41 id: 31ed2e1075 (このIDを非表示/違反報告)
瑠璃烏(プロフ) - 彗さん» ありがとうございます! (2月6日 11時) (レス) id: 8bc81fca4f (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:瑠璃烏 | 作成日時:2024年1月21日 10時

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