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「Aさん、何かあった?」


「…潔くん。ううん、なんでも」


「そう?なんか…また飛び降りそうな顔してる」



なんで君は気付くんだろう。どうしたのって聞いてくれるんだろう。

その優しさに触れると、絶望しようにも出来ない。その優しさを求めてしまう。心の柔いところを曝け出したくなってしまう。

俯く顔を更に下から覗き込まれて、思わず顔を逸らす。これじゃ何かあったって言っているようなものだ。

でも潔くんは何も言わずにいてくれた。



「何かあったら、また話してよ。話すだけで軽くなると思うから」


「…うん」



こんなに優しい人に囲まれて、私は幸せ者だ。ひとみもいて、潔くんも高里くんもいて。



「ね、今日うち来ない?」


「今日…?でも、明日学校だし…」


「また父さんに送ってもらってさ。なんか、今のAさん1人にしたくない」



ぐ、と喉が苦しくなる。必死に堪えていないと泣いてしまいそう。そんなこと出来ない。



「じゃあ…お邪魔、しようかな」



無理して笑ったから頬の筋肉が痛い。そんな私を見て、潔くんは笑って頷いた。











「おかえり、世っちゃん。Aさんいらっしゃい。今日はしょうが焼きなの。好き?」


「はい、もちろん。お邪魔します」



どうぞ〜と優しい声に促されて家に上がり、潔くんの後について洗面台の前に立つ。この家はどこにいても優しさに包まれるようだ。

まだご飯まで少しかかってしまうからと、潔くんの部屋に通された。見回すと案の定あんま見ないでと視界を通せんぼされる。



「潔くん、お風呂は?私1人で残してくのが嫌ならリビングで待たせてもらうから、入ってきなよ」


「いいよ、後でで。それより頼みたいことが…」


「うん、なに?」



潔くんは何やらうんうんと唸っていたけれど、やがて観念したように頭を下げた。



「勉強、教えてください…!」


「勉強?いいけど。何の教科?」


「数学と英語…あと化学」


「分かった。任せて」



神だ!なんて涙を流しそうな勢いの潔くんを見て笑い声が溢れた。



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瑠璃烏(プロフ) - さっちゃんさん» コメントありがとうございます!悪女書くの苦手で…結局いい子になっちまったです。悪女断罪系もいつか書きたいです!閲覧ありがとうございます!! (5月6日 20時) (レス) id: 8bc81fca4f (このIDを非表示/違反報告)
さっちゃん(プロフ) - 途中から入ってくるマネって、だいたい悪女多いからそのタイプかぁ…とか思ってたらめっちゃいい子だった!面白かったです! (5月6日 17時) (レス) @page50 id: c5a0fb1f72 (このIDを非表示/違反報告)
瑠璃烏(プロフ) - 苺さん» ありがとうございます!悪女を書くにはまだ修行が足りない……いつか書きたいと思ってます! (2月13日 8時) (レス) id: 8bc81fca4f (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - ひとみちゃん、悪女かと思いきやかなりいい子で😩❤️❤️❤️人間味ある感じ?!とても好きです。。!!! (2月13日 2時) (レス) @page41 id: 31ed2e1075 (このIDを非表示/違反報告)
瑠璃烏(プロフ) - 彗さん» ありがとうございます! (2月6日 11時) (レス) id: 8bc81fca4f (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:瑠璃烏 | 作成日時:2024年1月21日 10時

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